この頃、料理研究家たちから、ため息が聞こえる。それは、時短レシピばかりを編集者たちに求められるからだ。

料理研究家たちの多くは、料理することが好きで、この世界に入っている。手間を厭わない人が多いし、ひと手間かければ、もっとおいしい料理を作れることもよく知っている。

しかし残念ながら、レシピの世界はここ数年、手間を惜しむ時短ブームの嵐に巻き込まれている。それはいったいなぜだろうか?

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料理レシピ本大賞の影響

ブームを盛り上げる要因は大きく分けて三つある。

一つ目は、2014年に始まった料理レシピ本大賞in Japanである。その年に人気が高い本が選ばれる同賞では、初回の2014年に『常備菜』(飛田和緒、主婦と生活社)が料理部門大賞に輝き、つくりおきレシピブームを盛り上げた。2016年も『つくおき』(nozomi、光文社)が料理部門大賞を受賞。

2018年は、もともと簡単料理である味噌汁のアレンジを提案した『みそ汁はおかずです』(瀬尾幸子、学研プラス)が、2019年は『世界一美味しい手抜きごはん』(はらぺこグリズリー、KADOKAWA)が、料理部門大賞に選ばれた。

他にも、つくりおきレシピや時短レシピの本が毎年、いくつも入賞している。料理レシピ本大賞で受賞すると、書店で特設コーナーに並べられるなどして注目度が高まり、本の売れ行きがアップする。受賞を狙ってレシピ本を作る編集者もいる。だから、ますます時短とつくりおきのレシピ本がたくさん出る。