英語だけじゃない…大学入試改革の「国語記述式問題導入」の害悪

誰も幸せにしない「改革」
おおたとしまさ プロフィール

アメリカ難関大学の足並みにも逆行

時を遡ること2016年2月29日には、文部科学大臣補佐官(当時)の鈴木寛氏がダイヤモンド・オンラインに「大学入試の『記述式導入』批判にモノ申す」という記事を寄せている。

2015年12月22日に発表された「記述式問題イメージ例【たたき台】」に対するメディアからの批判への反論である。記事のなかで鈴木氏は「日本を除くすべての先進国では、入学者選抜にエッセイライティングの能力が求められています」と主張するが、エッセイライティングが求められるのは通常、個別の大学の選抜においてである。

 

アメリカの「共通テスト」にあたるSATやACTにも「エッセイ」があるが、2018年ハーバード大学は入学者選抜にSATやACTのエッセイを要求しないことを発表した。「SATやACTのような標準テストのエッセイに意味がないことがわかった」という理由だ。アメリカの難関大学のうちたとえばコロンビア大学、コーネル大学、ペンシルバニア大学、マサチューセッツ工科大学などはハーバード大学より以前に、エッセイの要件を撤回していた。

ハーバード大学メモリアルホール Photo by iStock

同じ記事のなかで鈴木氏は、記述式問題の導入にはコストがかかることを認めたうえで「人工知能研究にしっかり投資して、日本語処理能力を飛躍的に向上させれば、採点の手間も劇的に改善するでしょう」と述べている。これが大いなる矛盾をはらんだ発想であることは前述の通り。ボタンははじめから掛け違っていたわけである。

初年度からあまり高い期待をかけるのは酷だとしても、この延長線上をいくら進んでも、当初の理念が実現できるとは思えないというのが、拙著『大学入試改革後の中学受験』(祥伝社新書)で述べているいまのところの私の見解だ。

改革によって得られるものと、生じる混乱。果たしてどちらが大きいのだろうか。

2019年11月1日、文科省が英語民間試験の翌年4月からの導入を見送るとの方針を固めたことが報道された。こうなると、2020年度の運用開始は実質的に極めて困難な状況になる。ついでに国語・数学の記述式問題導入も見直してはどうか。

大学入試改革後の中学受験』大学入試改革によって、中学受験の何が変わって、何が変わらないのか? 小学生の親が知っておくべき要点をズバリ指摘する1冊。