冬の砂浜を歩いていると、白く透き通ったとてもきれいな貝殻を見かけることがある。
この貝殻は二つ合わせるとアオイという植物の葉のような形になることから「アオイガイ」と呼ばれている。
生きているアオイガイを観察したいときは、夜の海に船の上からイカ漁に使う強い光を向けてやる。アオイガイは光に集まる習性があるのだ。
水面にポコン! と浮かんだ白い貝をすくう。なにこれ!? 貝がらから大きな目とたくさんのあしが出ているぞ! サザエやアワビとはまったく違う姿。いったいこいつは何者だ!?
正体を確かめるために中身を取り出してみよう。
なんと! 小さなタコが出てきた。
そう! アオイガイは名前に「貝」とついているけれど、実はタコの仲間。「カイダコ」と呼ばれることもあるんだ。
アンモナイトの生き残りか!? と思ってしまうかたちだけれど、そこは「他人のそら似」らしい。
アオイガイは普通のタコにはない平たく広がった二本の腕を持っている。貝殻を包むように広がるこの腕から石灰を分泌し、貝殻を大きくしたり修理したりするのだ。
でもこの貝殻、とっても薄くて弱い。中身が透けて見えてしまうほどだ。だから、乱暴に触ると簡単に壊れてしまう。
水面に浮かんだところを次々とカモメに襲われているし、身を守るためにはあまり役に立っていないような……。