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「自己肯定感」にこだわる母親たち、わが子を息苦しくさせるワケ

「世代間連鎖」を防ぐ子育て論〈番外編〉
子育てにまつわる情報は世にあふれている。情報がありすぎて、かえって親は不安になることも多い。そもそも万人にあてはまる子育ての「正解」はない。しかし、「これだけは子どもに対してやってはいけない!」ということならある。それをまとめた1冊が『後悔しない子育て』である。著者の信田さよ子さんが初の子育て論を書いた背景には、「世代間連鎖」と「自己肯定感」という2つの言葉の広がり方への強い危惧があったという。

「世代間連鎖」は防げないという思い込み

最近は、カウンセリングに訪れる人はもちろん、一般の人も「虐待は世代間連鎖するんでしょう?」と当たり前のように語ります。

昔から誰もが「親に似る」「親の血を受け継ぐ」といった言葉を使ってきました。「あなたのああいうところはお父さんそっくりだね」「やっぱりお母さんの血を受け継いでるのね」というように、自分を説明するために遺伝的継承を持ち出すことは、日常よくあることのひとつです。

親や親族のだれかに似ていると考えるのは、外見や体格も含めて、自分の由来(この自分はどこから来たのか)を説明するのにいちばん確かだからでしょう。

「世代間連鎖」も同じような意味で使われているのかもしれません。この言葉は、1990年代に親による子どもの虐待が表面化するようになったころ、「世代間連鎖が生み出した」という説明が広がったことで、多くの人に受け入れられるようになったのです。

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家族はいいもの、暖かいもの、母親は子どもを守り育てる愛情豊かな存在、という強固な規範はそれほど変わらずにあるのに、いっぽうで虐待事件がどんどん表面化する。そうなると虐待する親たちをどのように説明するのかが難しくなります。

親たちを病理化(性格的偏りがあり病的だ)したり、社会的要因(貧困や社会的孤立)を強調したりするといった説明に加えて、1990年代前半から盛んになったのが「世代間連鎖説」でした。

 

「親からの虐待が次世代の虐待を生む」という考えは、アメリカで広がった単純化されたトラウマ説をベースとしています。

1980年代のアメリカは、あらゆる精神的疾病や犯罪行動の影に親からの虐待があるとするセラピストが多数出現し、最終的には個人のこころの傷に帰することを特徴とするポップサイコロジー(大衆心理学)が盛んになりました。虐待によるこころの傷は、次の世代への虐待にもつながるとされたのです。