イスラムは女系継承ではない
イスラムが女系継承であるという一般的な誤解があります。預言者ムハンマド(英語読みはマホメット)の子孫は女系であるとされますが、そうではありません。
ムハンマドには、13人の妻に7人の子供がいたと言われます。しかし、男子は皆、夭折したため、後継者を娘のファーティマに指名しました。

ムハンマドの家系はハーシム家です。ファーティマはハーシム一族のアリーと結婚します。アリーはムハンマドの年若の従弟で、ハーシム家の男系の血を引いています。したがって、ファーティマとアリーの間に生まれたハサンとフサインの2子はハーシム家の男系子孫です。
この2子を女系とするのは、ムハンマドの直系血筋だけを見た時の捉え方で、ハーシムの家系全体を見た時は男系となります。男系男子の家督継承という原則が重んじられていたからこそ、ファーティマは一族の男系のアリーと結婚したのです。
ムハンマドの他の娘は子をなさなかったので、ムハンマドの血を引いているのはアリーとファーティマの子孫のみです。
その子孫を正統なムハンマドの後継者と認める人々は「シーア・アリー」(アリーの信奉者)、略して「シーア派」と呼ばれるようになります。
シーア派はアリーを初代の「イマーム」(「指導者」の意)とし、アリーとファーティマの子孫たちに歴代、「イマーム」位を継承させます。この継承はアリーを起点とする男系男子の継承です。女系女子の継承ではありません。
イスラムの男系継承の原則は、武力を背景に持つ男性が家督や財産を継承し、責任と義務を果たすべきとする世界共通の考え方に則ったものです。