撮影/村田克己

乙武洋匡×みどりわたる「義足を隠す時代」から「義足で魅せる時代」へ

パラ陸上漫画を描いた漫画家が聞く

小学館の漫画週刊誌「ビッグコミックスピリッツ」(2019年11月11日号)で、『新しい足で駆け抜けろ。』という新連載が始まった。その巻頭カラーグラビアの最後に、乙武洋匡氏の姿が。乙武氏、漫画週刊誌でのグラビア出演である。

この連載は、漫画家のみどりわたるさんによる新しいスポーツ漫画。主人公は、中学までサッカー部のエースだったが、今は左脚を失い義足の高校生・菊里だ。義肢装具士と出会って”走る”気持ちよさを思い出した菊里が、スポーツ義足で走ることを決意する、熱血100Mパラアスリートストーリーなのだ。

奇しくも乙武氏は「乙武義足プロジェクト」の2年間の軌跡を『四肢奮迅』という一冊にまとめたばかり。そこで乙武氏とみどりさんとでの「義足談義」をしていただいた。

テキスト:園田もなか 協力:小学館・ビッグコミックスピリッツ

義足を履いたことで知る「自分の身体」

乙武洋匡(以下、乙武) 実は、お会いするのは2回目なんですよね。今年の3月末にクラウドファンディングの返礼品で練習見学会があったんだけど、それに来てくれていた。

みどりわたる(以下、みどり) あの日はちょうど乙武さんが10メートル達成したときですね。

乙武 そうそう、懐かしいなあ。

クラウドファンディングの返礼品として、練習見学会が4回開催された 撮影/森清

みどり 自分が漫画で義足を扱うこともあり、今まで義肢装具士やパラアスリートの方への取材を重ねてきましたが、乙武さんの義足プロジェクトもすごく興味があって。というのも乙武さんって、歩いた経験がないわけですよね。義足を履く前って、歩くことをどのようにイメージしていたのかな、って。

乙武 イメージは全くできてなかったです。イメトレができるようになったのは、プロジェクトを始めて1年ぐらい経ってからかな。義足を履いて練習を重ねていくうちに、ようやく「歩くってこういうことか」と知った。身体で感覚を覚えていった感じです。

 

みどり 新しいことを覚えていく中で、自分の身体に対する発見ってありましたか。今まで気づかなかった癖とか。

乙武 沢山ありましたね。私は足の長さが左右で違くて、右のほうが3cmほど短いんです。それは見ればわかることですけど、義足プロジェクトを始めたことで、筋肉量にも左右に大きな違いがあることがわかりました。プロジェクトの一環でMRIも撮ったんですけど、医師がいうには「右足はアスリート並みの筋肉量です」と。

みどり へえ!

乙武 逆に、左足の筋肉はまるで発達していない。子どもの頃の映像などを振り返ると、知らず知らずのうちに短い右足を軸に動いていたこともわかります。日常生活では大して支障はなかったけど、片足5kgの義足を両足につけて歩くとなると、途端にうまく動けなくなってしまったんです。

乙武氏1歳半のころの義足歩行練習 写真/『頑張れヒロくん―四肢欠損児3歳10ヶ月の記録―』(東京都補装具研究所小児切断プロジェクト)より

みどり それが弊害になるとは思っていなかったんですね。

乙武 上半身にも問題があって、車椅子に座った状態でい続けたせいで、私の身体はL字型に固まってしまっているんですね。それも普段の生活では特に問題ないけど、立って歩こうとした途端、前のめりになって転びやすくなってしまう。これは理学療法士の力を借りてストレッチなどで徐々に改善をしているところです。

みどり 肉体改造ですね。トレーニングを始めてから、身体に変化などはありましたか。

乙武 自分で実感することは少ないんですが、両足とも筋肉量が増えて太くなったみたいです。それに合わせて、太ももを包み込み義足と接続する「ソケット」というものも大きくしました。このソケットを作っているのが、作中にも登場する義肢装具士ですね。このプロジェクトでは沖野敦郎さんという方にお世話になっています。

みどり そうですよね。私の作品も沖野さんに取材をさせていただいているんですよ。沖野さんは特にパラアスリートの方々への競技用義足などについても知見のある方だったので。