脳卒中という病名はよく聞きますが、これはいくつかの病気の名前をあわせた総称です。ここに含まれる病気は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血で、それぞれの病名で覚えている方も多いと思います。
いずれも、脳の血管が詰まる、あるいは破れるなどして起こる病気です。脳の血管が損傷される病気であることから、専門的には「脳血管障害」と言われています。
血管は、加齢とともに内側が狭くなり、壁がもろくなってきます。そのため、血流が滞りやすくなったり、壁が破れて出血しやすくなったりします。この変化を動脈硬化と言います。動脈硬化は老化にともなって進むため、脳卒中は誰にでも起こりうる危険があると言えますが、動脈硬化を早めてしまうと、起こす確率も格段に高くなります。
こうした動脈硬化を早める要因として、高血圧、脂質異常症、糖尿病に代表される生活習慣病があり、喫煙、多量飲酒、肥満などの生活習慣がその背景にあります。
残念ながら、動脈硬化が進んだ血管をもとの状態に戻すことはできません。脳卒中を治療しても、動脈硬化は残ります。再発を防ぐには、動脈硬化を今以上に進ませないようにするしかないのです。
脳卒中は時間が勝負です。早急に医療機関で治療を受け、症状が落ち着いたあとも治療や検査をする必要がある病気です。
そのため、脳卒中の対応については、ある地域のなかで医療機関ごとに役割が決まっていて、それぞれの医療機関が病態や病期に応じて治療を分担しています。
急性期:脳卒中発症時の急性期は〈救命〉が最優先です。対応する医療機関は、設備の整った「急性期病院」で、さまざまな専門性をもつ医師たちが協力して治療に当たります。
慢性期(回復期):命の危険を脱した慢性期になると、〈回復〉に向けた治療、リハビリがはじまります。治療は、再発予防が中心となります。リハビリによる回復は、発症から3〜6ヵ月までが目安です。急性期病院でもリハビリのスタッフや設備はありますが、より専門的なリハビリを受けるには、リハビリ専門の病院へ転院が必要です。
慢性期(維持期):日常生活が可能と判断されたら、自宅へ戻って、かかりつけ医の下で療養しながら通常の生活を取り戻す〈維持〉の段階になります。再発予防の治療を続けながら、体の機能を維持するリハビリを行います。
え!? 退院したのだから、もう治ったということじゃないの?
こう思う方もいるかもしれませんが、じつは一度脳卒中を起こした場合、気をつけなければいけないある"危険"が潜んでいるのです。