2020.02.18
# 精密機器

「飛ぶ光」を激写! 「1億分の1秒」を切り取る超カメラの開発秘話

開発者は土木工学の専門教授

まったく土木工学とは畑違いの研究分野だったが、江藤教授らは電気工学や半導体工学等の撮像素子の開発に必要な知識と技術を学びながら、世界のどこにもなかったカメラの開発を進めていった。その研究は短期間で目覚ましい成果を挙げた。

1991年には当時の世界最高速、4500分の1秒のカメラの開発に成功。このカメラでは時速200キロで走る新幹線の中にいる人の表情や、飛んでいるトンボの羽の模様をくっきり撮影することができ、NHKのテレビ番組で特集も組まれた。

「当初は『これぐらい速ければ十分だろう』と考えたのですが、高速現象を扱うさまざまな研究者にアンケートを行ったところ、『さらに速いカメラをぜひ開発してほしい』という要望が多数寄せられたのです」

さらなる高速化を決意した江藤教授らは、2001年に島津製作所との共同研究で100万分の1秒のカメラを開発。このカメラは、世界中の自動車メーカーに納入され、衝突実験による安全性の向上、エンジン開発にともなう燃費向上、排ガスの浄化などに活用された。

Photo by iStock
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「1億分の1秒」がつくる未来

2004年には映像のカラー化にも成功。色がつくことで映像の情報量が増え、流体を撮影した際の温度変化も測定できるようになった。2011年には1600万分の1秒、2013年には4000万分の1秒と高速化はさらに進み、ついに2017年に1億分の1秒を達成した。

近畿大学で江藤教授・竹原教授らがこれまで進めてきた高速カメラの研究は、世界中の研究機関・企業のなかでもトップグループに位置する。

1億分の1秒を切り取る超高速ビデオカメラ
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「世界には、特殊な装置を用いて光の飛翔を捉えた研究グループもありますが、イメージセンサを用いる我々のカメラは、通常のビデオカメラのようにどこにでも持ち運びができ、高度な技術を持たない人でも撮影をすることができます。

応用範囲は非常に広く、いまの私たちが予想もつかないような用途や研究に活用されるはずです」

「好き」を研究にするなら近畿大学!

竹原教授は土木工学出身の自分が、高速カメラの開発に邁進できたのは「近畿大学だからです」と語る。

「ほかの大学だったら『土木なのになぜ?』と横槍が入っていた可能性は大いにあります。研究者が自由にやりたい研究に没頭できる環境が近畿大学にはありますね」

竹原教授は「カメラの開発ではさまざまな企業と共同研究を行ってきましたが、実は全国の大学のなかで近畿大学はトップレベルの産学連携数を誇っているんです」とも語った。

近畿大学理工学部のある東大阪市は中小企業の工場が密集していることから、数々の共同研究の依頼が舞い込むのだという。将来、自分の研究を社会の役に立てたいと思う理系学生にとって、近畿大学理工学部はまたとない経験を得られる場となっている。

近畿大学
近畿大学は14学部を擁する総合大学であるとともに、大学院、通信教育部、医学部病院、研究所のほか、2つの短期大学、高等専門学校、看護専門学校、高等学校、中学校、小学校、幼稚園を擁する一大教育機関です。学園全体の学生数は5万3000人を超えています。

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