「実験では、レーザーのパルス光を照射し、10メートル弱の部屋の両端の壁にとりつけた鏡で反射させました。数メートルの『光の帯』が飛ぶ瞬間をイメージセンサを用いたカメラで撮影できたのは、我々が世界で初めてです」
竹原教授らが開発したカメラの分解能は「1億分の1秒」。1秒を1億に分割した瞬間を10コマ連続で撮影できる。
「自然界にはこれまで観察することができなかった、超高速で起きている現象がたくさんあります。たとえば、核物理学における粒子と粒子をぶつけたときの反応や、細胞内のシグナル反応なども、このカメラを用いれば撮影できる可能性があります」
竹原教授の専門は土木工学。もともとは大気と海洋の間で起こっている二酸化炭素などの物質の交換現象を研究していた。
「約30年前、その研究のために海洋表面を当時のアナログビデオカメラで撮影したのですが、毎秒20数コマでは遅すぎて何が起きているかまったくわかりませんでした。そこで同じく近畿大学理工学部で河川計画、水資源等を研究していた江藤剛治教授をリーダーに、超高速デジタルビデオカメラの開発を進めることになったのです」