あなたは何に進化したい? 進化の方向を自分で決める方法

人間はダーウィン進化論を超えるのか?
更科 功 プロフィール

ということで、2つ目の反論だ。それは、「行動によって方向が決まる主体的な進化もある」とダーウィンが考えていようがいまいが、そんなことはどうでもよいということだ。

自然淘汰の仕組みは以下のように表せる。

  • 1 同種の個体間に遺伝的変異(子に遺伝する変異)がある。
  • 2 生物は過剰繁殖をする(実際に生殖年齢まで生きる個体数より多くの子を産む)。
  • 3 変異によって、生殖年齢まで生き残る子の数が異なる。
  • 4 生殖年齢までより多く生き残る子がもつ変異が、より多く残る。

当たり前のことだが、もし13の条件が満たされれば、自動的に4は実現する。つまり、13の条件が満たされれば、必ず自然淘汰は起きる。生き残る子の数が異なる原因が、気候だろうが行動だろうが、そんなことは関係ないのだ。

筋肉国と記憶国のたとえでも、13の条件は満たされているはずだ。なぜなら、どんな行動をしようが、個体間に遺伝的変異は生じるだろう(これが1)。

そして、国民の特徴が変化したということは、そのお国柄に合わない個体の子の数が少なかった、つまり、そのお国柄に合わない個体が減っていったということだ(これが3)。

だから、もし過剰繁殖をしていなければ、だんだん国民が減って、絶滅してしまう。でも、絶滅しなかったのだから、過剰繁殖をしていたに違いないのである(これが2)。

つまり、生物がいかに行動するかを自ら選択したとしても、自然淘汰はきっちり働いているのである。

したがって、「進化には、ダーウィンの言ったような受け身の進化だけではなく、行動によって方向が決まる主体的な進化もある」と言う意見は、進化のメカニズムという点では正しい。

ただし、ダーウィンに関する記述は間違っている。

 

正しくは、「進化には、ダーウィンが強調したような受け身の進化だけではなく、ダーウィンが(言わなかったわけではないけれど)強調しなかった、行動によって方向が決まる主体的な進化もある。しかし、そのどちらにも、ダーウィンが主張した自然淘汰がきっちり働いている」ということになる。

行動によって方向が決まる主体的な進化も、あくまで自然淘汰によって起きているにすぎない。ダーウィンを超えたと思ったけれど、実はダーウィンの掌(てのひら)の上にいたのである。

【写真】超えられない巨人・ダーウィン?
  超えたと思ったけれど、彼の掌(てのひら)の上にいただけだった…… photo by gettyimages

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