2019.11.01
# 野球

短期決戦の鬼・内川聖一という男〜日本シリーズの「一打」を振り返る

「史上最強打者」は伊達じゃない
二宮 清純 プロフィール

シリーズの行方を決定づけた一打

2014年、野球専門誌の『週刊ベースボール』(5月19日号)が現役・OB計202人による「史上最強打者」アンケートをとりました。栄えある1位に輝いたのが内川選手です。

2つほどコメントを紹介します。「守っていても一番攻めにくい」(東北楽天・嶋基宏選手)、「投手としてどこに投げたら抑えられるかわからない」(広島・中田廉投手)。金子千尋(現・弌大/北海道日本ハム)投手は「何を投げても、ちゃんと芯で当てられる。あるいは打ち取った、詰まらせたと思った打球がヒットゾーンに飛ぶ。だから余計に困ってしまう」と私に語ってくれました。

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その内川選手に対し、フルカウントからの6球目、戸郷投手は外角低めにカットボールを投じました。切れといいコースといい最高のボールでした。

さしもの内川選手もタイミングを外され、ミートの瞬間は腕が伸び切っていました。だが、ここからが内川選手の真骨頂です。左手一本でレフト前に運んでみせたのです。

戸郷投手のショックは、いかばかりだったでしょう。「三振をとれた、という気持ちがありました。あれで気持ちが崩れたというのは、あるかもしれない。内川さんの一打の印象はその後も大きくて、投げても振ってもらえないコースと思って、徐々にコースを上げていってしまった……

 

この後、戸郷投手は四球に悪送球もからみ、この回、一挙4点を失いました。内川選手に打たれたショックが尾を引いていたのは、青冷めた表情からも、はっきりと窺い知ることができました。結局、このゲーム、ソフトバンクが6対2と逃げ切り、シリーズの行方を決定付けたのでした。

内川選手の短期決戦、そして国際試合での勝負強さは、それこそハンパではありません。WBCには3度出場し、49打数17安打、打率3割4分7厘と打ちまくっています。来年7月に開催される東京五輪、人数が限られているとはいえ、ベンチに置いていて、これほど頼りになるバッターはいません。本人は第4回WBCが終わった後、代表引退を示唆するコメントを口にしましたが、来年の夏までは凍結しておいてもらいたいものです。

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