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1万の「名医AI」が診断する日へ!数百万次元のがんデータ解析へ!

データサイエンスが進む「医学」の道
2017年から2018年にかけて、国立情報学研究所(NII)医療ビッグデータ研究センターと統計数理研究所(ISM)医療健康データ科学研究センターが設立された。
情報・システム研究機構に属するこの2研究所はそれぞれIT、統計の知見を結集するだけでなく、大学共同利用機関として他分野との共同研究を促進する役割をも任ずる。

両研究所が担うデータ基盤、そして昨今「AI(人工知能)」に象徴されるデータ解析力は、ますますイノベーションや科学の発展の駆動力となっており、中でも私たちに身近な医療は、連携によって拓かれる新たな道に期待がかかる。
データサイエンスは日本の医療にどれだけ貢献できるのか、研究開発の狙いはどこにあるのか。2つのセンターの活動を紹介しよう。

(聞き手:池谷瑠絵 特記以外の写真:飯島雄二 『サイエンスリポート』より転載)

医療とデータが手を組む日

東京・一ツ橋にあるNIIは、日本で唯一ITだけを総合的に研究する研究機関だ。

2017年から日本医療研究開発機構(AMED)が率いる「医療のデジタル革命実現プロジェクト」のパートナーとなり、日本消化器内視鏡学会、日本病理学会、日本医学放射線学会、日本眼科学会の4つの学会とともに医療健康分野のICT基盤をつくり、画像解析、深層学習、AI(人工知能)などを開発する課題に取り組む。

このミッションを担う医療ビッグデータ研究センターには、NIIだけでなく東大、名大、九大等から選りすぐりの画像解析研究者が参加する。メンバーは、若いポスドク研究員などを含めて約10名。ただし、そのほとんどが医療画像解析の経験は浅いという。

「私は画像解析や深層学習の研究者で、これまで医療はやってこなかった」と言うのは、センター長の佐藤真一教授だ。

佐藤真一教授
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「けれども、ある意味、できる。つまり、僕らは画像を見ても判断できないのだけれど、僕らがトレーニングしたAIの一種であるニューラルネットワークは判断するんです」

これまで医療画像の解析に取り組んでいた科学者たちは、自分の中にある医学の知識をいかに画像処理に反映させるかを目指してプログラミングしていた。

「潮目が変わったのは、機械に大量の学習データを食わせれば何らかの結果が出てくるようになったから」と佐藤教授は言う。

「共同研究がスタートしてまだ1年と数ヵ月ですが、特に眼底画像を使った糖尿病や緑内障の診断では、ほとんど工夫をしていないような画像解析の人工ニューラルネットワークで、すでに高精度な識別ができています。

ところがこれ、医師が行うと難しい診断なのだそうです」

画像解析・深層学習の「第三の波」

ところで佐藤教授の言う潮目の変化とは、いつ頃なのだろうか?

「2012年に画期的な機械学習アルゴリズムが現れ、神経細胞(ニューロン)網をシミュレートして学習や判断を行う手法により、これまでをはるかに凌駕する性能を達成できたことが大きいですね」

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歴史的に振り返ると、人工ニューラルネットワークの研究はこれまで大きく3段階で発達してきたと佐藤教授は言う。

「第一の波は、脳の神経回路を模したニューラルネットワークの登場です。事実上1層しかないネットワークで、任意の線形関数が学習できることが証明され、入力さえ与えれば学習できる枠組みができました。第二の波がいわゆるニューロファジーです。深層学習は2〜3層と少し複雑になりました。