2019.12.16
# 情報学 # AI

「ものづくり」の限界を超えるカギ「データサイエンス」に入門しよう

データと数学がひらく、材料工学の未来
サイエンスリポート プロフィール

「クロード・レヴィ=ストロースの貢献の一つは、さまざまな共同体に共通する構造を抽出したことである、と理解しています。情報科学が従来相手にしてきた情報システムと、それに物理系が加わった工業製品のような物理情報システム、この2つは一見違うけれども代数的な目で見れば一緒なところもたくさんある、ということなんです」

クロード・レヴィ=ストロース Photo by gettyimages
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むしろこのような圏論の強みに、物理情報システムの品質保証という応用を見つけた点が、プロジェクトを世界的にもチャレンジングな取り組みにしていると言えるだろう。

数学的な積み上げが、羅針盤になる

一方、情報システムにおいては、以前から無限ループに陥ることはないか、脆弱性はないかといった検証が欠かせない。針の穴ほどのわずかな間違いが、ロケットの打ち上げに不具合や、コンピュータの四則演算にエラーを生んだ例もあることから、ソフトウェアやハードウェアが思った通りに動いているかどうかを数学的に検証する「形式手法」が比較的普及しているという。

ところが情報システムにおける形式手法を、物理情報システムである実際の工業製品にいかに展開するかは自明でないため、使われている例はまだ多くない。

「未開の領域に踏み出すにあたって、数学的な積み上げが、確かなガイドになる。われわれは圏論を使って形式手法を拡張し、問題の本質を数学の言葉で書いたテンプレートのようなものを充実させていきます」

「そしてこれらをいわば『ひきだし』に蓄えて、現場の技術者の方々と対話しながら具体的な課題に合った証明をつくっていく。またこの過程では、近年発達を遂げている人工知能や機械学習の技術が活用できます」

 

「実際の製造の現場においては、今だったらエンジニアが知識と長年の経験に基づいて、『だいたいこのあたりをテストしておけば大丈夫だろう』と検証しているプロセスの時間と労力が、大いに短縮できるはずです。このような例を、5年半のプロジェクトが終了するまでに、5例作ることを目標にしています」と蓮尾准教授は言う。すでに数社との間で対話が始まっているそうだ。

答える人
吉田亮 准教授(統計数理研究所)

博士(学術)。2004年総合研究大学院大学統計科学専攻修了、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センター特任助教、情報・システム研究機構 統計数理研究所助教を経て、2011年より現職。2017年7月より、同研究所ものづくりデータ科学研究センター センター長。国立研究開発法人 物質・材料研究機構特別研究員、総合研究大学院大学 複合科学研究科 統計科学専攻 准教授を兼務。

JST-CREST生命動態領域「神経系まるごとの観測データに基づく神経回路の動作特性の解明」(主たる共同研究者)、JSTイノベーションハブ構築支援事業「情報統合型 物質・材料開発イニシアティブ」物質・材料記述基盤グループ(グループリーダ)、国立研究開発法人 物質・材料研究機構「マテリアルズオープンプラットフォーム」等のプロジェクトに参画。国立研究開発法人 物質・材料研究機構 特別研究員を兼任。
答える人
蓮尾一郎 准教授(国立情報学研究所)

国立情報学研究所アーキテクチャ科学研究系准教授。2002年東京大学卒業、2008年学術博士(計算機科学,オランダ ナイメーヘン・ラドバウド大学)。東京大学 大学院情報理工学系研究科准教授、京都大学 数理解析研究所客員准教授等を経て、2017年4月より現職、同11月より同研究所システム設計数理国際研究センター センター長。

専門は理論計算機科学、特にシステム検証、プログラミング言語理論、物理情報システム、情報科学における数学的構造に関心を持つ。2016年10月よりJST ERATO 蓮尾メタ数理システムデザインプロジェクト研究総括。

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