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天才的な喚起力! 作家・片岡義男と江國香織が語る「フレーズの選び方」

小説の書き方「超入門」後編

好評企画第2弾! 作家・片岡義男さんと江國香織さんに、批評家の佐々木敦さんが聞く「小説の書き方・超入門」。後編では書くべきことの見つけ方、そして魅力的なタイトルについてもお話が広がりました。

*前編「片岡義男の「言葉をあやつる」凄いテクニック」はこちら

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小説にとって「移動」とは

佐々木:江國さんが今年刊行された『彼女たちの場合は』という長編。僕は非常に感動しました。

江國:ありがとうございます。

佐々木:行き先という言葉と具体的に整合性がある小説です。

これは、2人のアメリカに住んでいる10代のいとこ同士の女の子が家族に黙って家出というか、旅に出ちゃう話で、アメリカの中をいくつも移動していく。いまのお話だと江國さんは、最終的にどんな風になるか決めて書いていったわけではなく、むしろ書きながら色々と決めていらっしゃったと思うんですよね。

片岡さんの小説の特に前半、日高が移動するじゃないですか。ベンツの車で、地方に住んでいる広島と呉と尾道。その3ヵ所に住んでいる、女性の友人を訪ねる。奇しくもお2人とも最新の長編小説が、「移動する」んですね。小説の中で登場人物が実在の場所に向かうということと、小説がどこに向かうのかというストーリーの論理がどんなふうに関係しているのか、気になるんです。

具体的な場所が持っている力とか、そこに実際に移動するということが、小説自体に影響を及ぼしたりするんじゃないかと思うんですが、片岡さんの場合は、なぜこの3ヵ所を選んだんでしょう。

片岡:僕が一応は知ってるからです(笑)。それから、近くにまとまってた方がいい。鳥取や下関もいいんですけど、ちょっと外れすぎかと思います。

かつて東京にいて仕事をしていて、日高さんとは仕事を通して付き合いがある3人の女性。彼女たちに順番に会ってみたら何かストーリーがあるのかなと彼は思うんですけれども、実は3人に会うだけで十分ストーリーなんですね。

 

佐々木:会いに行ったら小説になるんじゃないかと思って本当に会いに行ったら、これで十分小説になるよねって思っている人の話ですもんね。ややこしいですけど(笑)。

窓の外を見てください』を読んでいると、頭がグルグル回る感じがするんですよ。一種のメタフィクションになっているんだけど、非常に自然なんです。自然なんだけど、実はややこしいことがいっぱい起きている。