2019.10.29
# 政治政策

「八ッ場ダムが洪水を防いだ」という主張は、こんなにも危うい

この洪水で八ッ場ダムの実力は測れない
梶原 健嗣 プロフィール

ところが、この洪水体験、迅速・適切な避難を促すこともあれば、逆に過去の洪水の経験が場合によっては避難の妨げとなる、両義的な要因だとも指摘されている。つまり、「あの時でも大丈夫だったんだからね。今回も大丈夫だよ」という認識につながる恐れがあるのである。

人間には、不都合な事実を直視することを避ける、「正常化の偏見」が備わっている。今回の洪水体験が上記のような認識をもたらしてしまう恐れはなしとはいえない。

今回の八ッ場ダムの治水効果は、試験湛水中ゆえに可能だった「実力以上」のできごとである。その点を正しく認識しなければ、将来的に大きなしっぺ返しを食らうことになるかもしれない。

(注1)計画を超える堆砂の進行により、洪水調節に影響が出ていることは会計検査院も指摘しており(「ダムの維持管理について」平成26年10月21日)、結構深刻な問題である。そして計画を超える堆砂の進行は、一部のダムで例外的に見られるものではなく、むしろ標準的な姿である(拙稿「ダム堆砂の実態について : 情報公開請求が語る堆砂の進行」『科学』2015年3月号)。

(注2)八ッ場ダムの洪水調節計画(参考:図3)は、洪水流量が2時間半ほどで一気に15倍の3000㎥/sまで増大し、その時も放流量を最低の200㎥/sまでに抑えるという計画である。しかし、同ダムの集水域は浸透力に優れた火山帯で、本当にここまで急激な洪水になるのか。この計画で、本当に同地域の洪水に的確な対応できるのか。再検討が必要に思われる。

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