2019.10.29
# 政治政策

「八ッ場ダムが洪水を防いだ」という主張は、こんなにも危うい

この洪水で八ッ場ダムの実力は測れない
梶原 健嗣 プロフィール

今回、八ッ場ダムが「実力」以上の洪水調節を発揮できた原因は、もう1つある。それは「利水容量」の問題である。

八ッ場ダムは、大別して利水(上水道、工業用水)、治水=洪水調節という2つの目的がある。洪水期=7月1日~10月5日までは治水を主とした運用を、非洪水期=10月6日~6月30日までは利水を主とした運用を行う。これによって、ダム湖の水位は27.8mも変動する。「非洪水期」の方が貯水位が圧倒的に高いのである(参考:図1)。

台風襲来時の10月12日は本来ならば、非洪水期に入り、冬場の水道供給のための貯水を開始しているはずの時期である。むろん、1週間程度ではそれほど水は溜まることはないだろう。夏季制限水位555.2mから徐々に水位を上げている時期であるから、その間にまとまった雨が降らなければ、水位は殆ど上昇していないということもありえる。それでも今回の10月11日水位519.5mと比べると雲泥の差、想定しているダムの運用状態の貯水位はもっと高いものである。

こうした点を総合すると、八ッ場ダムは今回の洪水こそダム湖の中に抑え込めたかもしれないが、それは「二度とできない活躍」と言えそうである。

 

ダムの「実力」を過信する怖さ

問題は、そうした事実を踏まえず、「ダムの実力」を過信することの弊害である。ここでは2点指摘したい。

(1)緊急放流の危険性

もし、来年以降のダム本格運用の中で今回の洪水が来た場合には、治水容量(6500万㎥)以上の空きがあった今回のような洪水貯留はできない。その場合には、ダム湖貯水位は常時満水位を超えてしまう。洪水がさらに続けば、ダムから洪水が溢れだすような事態に陥ってしまうことも懸念される。

そうなることを回避するために、ダムの運用では緊急放流として、ダムへの洪水流入とダムからの洪水放出を同じにして、これ以上水が増えないようにする。この次に、八ッ場ダムが今回と同規模の洪水を経験する時には、こうした緊急放流を余儀なくされることは必至である。

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