2019.10.29
# 政治政策

「八ッ場ダムが洪水を防いだ」という主張は、こんなにも危うい

この洪水で八ッ場ダムの実力は測れない
梶原 健嗣 プロフィール

二度とできない「活躍」

台風19号が吾妻川に押し寄せた10月12日から13日にかけて、同ダムは7500万㎥の洪水を溜め込んだ。前述の通り、水位は1日にして50m以上上昇し、575.4mにまでなった。

満水位(583m)までには、もう少し余裕があるが、多くの方が「一夜にして満杯になった八ッ場ダム」、「台風19号を限界までため込んだ」という印象を持たれたのではないか。映像等で見るインパクトは大きく、ダムの貯水効果をまざまざと見せつけられたという思いを持つ方も多いかもしれない。今回果たした「洪水調節」の役割を、評価しなければならない側面もあるだろう。

 

しかし、今回の八ッ場ダムの治水効果(洪水調節効果)を、八ッ場ダムの「実力」と見るのは早計である。今回の台風19号による洪水は、「試験湛水開始直後」というタイミングで起きたものだった。そのため、本来の実力以上の「予定外の洪水調節」ができた事例である。これを本来の「八ッ場ダムの実力」と見間違うと、大きな問題を生じてしまう

どういうことか。

ダムは運用後100年の間に溜まる土砂量を、あらかじめ「計画堆砂量」として見込んでおく。八ッ場ダムの場合は、これが1750万㎥。全体(総貯水容量、10750万㎥)の約1/6である。洪水開始時(10月11日)の519.5mという水位は、八ッ場ダムで設定されている「最低水位」よりも16.8mも低い(参考:図1)。

何年後かには貯留できなくなるポケットにも、今回の洪水は貯め込むことができたのである。つまり今回は、ダムが運用前で土砂が溜まっておらず、貯水量に余裕があったために「想定以上」の洪水調節の役割を果たせた可能性が高い(注1)

関連記事