〔PHOTO〕Gettyimages

「八ッ場ダムが洪水を防いだ」という主張は、こんなにも危うい

この洪水で八ッ場ダムの実力は測れない

「八ッ場ダムが被害を防いだ」は本当か

10月12日、日本列島に上陸した台風19号(最大気圧915hpa、最大風速55m/s)は、各地に豪雨をもたらした。10月25日までに判明している人的被害は死者77名、行方不明者8名、負傷者435名だという(消防庁)。

台風の直後、ネットを中心に散見されたのが、「八ッ場ダムが洪水の被害を抑えた」という意見である。さらにはそうした意見を敷衍して、八ッ場ダムは治水にとって意義の大きい公共施設であること、計画中止にしようとした過去の政権が間違っていたことを喧伝する声も聞かれた。

 

だが実際のところ、その評価は正当だろうか。さらには、今後も八ッ場ダムにそうした役割を期待できるのだろうか。以下ではそのことについて考えつつ、今回の八ッ場ダムの「活躍」を過大評価することの危うさを指摘したい。

「特殊な状況」にあった八ッ場ダム

台風19号による洪水は、試験湛水中だった八ッ場ダム(群馬県吾妻郡長野原町、総貯水量10750万㎥)にも押し寄せた。試験湛水とは、ダムの堤体(本体)完成後に行う試験運用で、貯水・放流時に、堤体、放流設備、ダム湖周辺などに異常を生じないかを確認する作業をいう。

八ッ場ダムの試験湛水は10月1日に始まっており、写真1はその直後の八ッ場ダムである。筆者は10月5日に八ッ場ダムを訪れていたが、まだまだ貯留量は少なかったことが印象的だった。

(写真1)10月5日の八ッ場ダムの様子〔PHOTO〕著者撮影

それが台風19号に伴う豪雨で、試験湛水中の八ッ場ダム貯水位は瞬く間に上がっていった。工事事務所の発表(表1)によると、10月11日には519.5mとしかなかった貯水位は、台風通過後の10月13日(午前9時)には575.4mになっている。なお、このデータは随時更新されるもので、ここで紹介したのは10月17日閲覧のものである。