不動産業界では「伝統」を気にする人が多い。
「歴史的に高い評価を受けてきた土地」はそれだけでブランド価値が高く、富裕層やセレブもおのずとそうした街に集まってくる――というイメージである。
しかし都市機能が変化し、住まいの需要についての膨大なデータによってデジタル分析が可能となったいま、そうした考え方はもはや「誤り」であると言えるだろう。
なぜなら伝統的な一等地にある不動産が必ずしも、そこに住む人たちの暮らしを豊かにするわけではないことがわかってきたからだ。むしろまったく別の基準で自宅を探すほうが、成功への近道となっている。
たとえば、東京商工リサーチの2017年全国「社長の住む街」調査によると、1位は赤坂、2位は西新宿、3位は六本木であった。
しかし、2003年のトップ3の顔ぶれはまったく違っていた。1位は田園調布、2位は成城、3位は大泉学園町という具合だ。
社長が住んでいる街は、この10数年で大きく様変わりしているわけだ。
ただし、じつはこの結果は「別の見方」もできる。
2017年にトップ3の街はいずれもマンション立地であり、2003年のそれは戸建て立地だという違いだ。