立派な父親に憧れた男が、娘を凄まじい「虐待死」に追い込むまで

目黒女児虐待死事件の「真相」(3)
石井 光太 プロフィール

なぜ病院へ連れて行かなかったのか

そんな結愛ちゃんの容態が変わるのは、死の1週間前くらいからだった。2月25日前後から、結愛ちゃんは腹痛を訴えるようになり、少量の食事さえとることができなくなっていく。当初、雄大は「ダイエットにいい」と言っていたが、嘔吐するようになってからは危険を感じはじめ、バナナやおかゆを食べさせたが、いずれもすぐに吐いてしまった。

この時、優里は心配して結愛ちゃんを病院へつれていくことを提案したが、雄大は次のように答えた。

「顔のアザが治ったらつれていく」

 

顔には雄大が殴った時についたアザが残っていて、病院へつれていけば虐待が発覚すると思っていたのである。そのため雄大はネットで対処法を調べ、経口補水液やブドウ糖の飴を薬局で買って与えるなどした。

公判で、雄大と優里は二人してこの場に及んでもなお「(結愛ちゃんが)死ぬとは思わなかった」と語っていた。だが、この時点でさすがにそれが真実とは考えにくい。結愛ちゃんの肌は土気色になり、顔から足の先まで枯れ枝のようにやせ細っていた。そんな中で嘔吐して食べ物を受け付けなければ、命の危険が迫っているのは明白だ。

私は二人が病院へ連れて行かなかったのは、大麻の問題が絡んでいるのではないかと推測する。雄大は事件後に自宅に2.4グラムの大麻を所持していたことで逮捕されている(大麻使用のための粉砕機や秤も押収)。公判で彼は四国へ行く前の東京に住んでいた時に入手したものと語ったが、友人はまったく異なる証言をする。

友人の話である。

「雄大はドラッグを大学2、3年の頃からやってましたね。初めは大麻。社会人になってからは、危険ドラッグに手を出してました。家で俺ら友達がいても普通にやる感じで、注意しても聞き流されました」

彼は香川にいた時も、東京へ引っ越してきた後も、大麻を使用していた。それを考えれば、ある程度の常習性があったと考えるのが普通だ。また、優里の親族はドラッグ関係の事件で逮捕されているし、彼女も雄大が大麻を吸っているのを見たことがあると語っている。

こうしたことからすれば、雄大が結愛ちゃんを病院へ連れて行かなかったのは、家宅捜索によって違法薬物の使用が見つかることを恐れていたという可能性が否めない。このように、両親が結愛ちゃんを死ぬまで自宅に閉じ込めていた背景には、虐待の発覚以外にも別の要因があると考えられるのである。