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「どこで、どうやって死ぬか」決めておかないと、家族が苦しみます

明日、死んでもいい準備

「このたびは、お忙しい中、私、金子哲雄の葬儀にご列席たまわり、ありがとうございました」

'12年10月4日、41歳の若さで亡くなった流通ジャーナリスト金子哲雄氏の通夜が東京都港区で営まれた。冒頭の言葉は、金子氏が生前に用意しておいた別れの手紙の書き出しで、参列者全員に配られたものだ。金子氏らしいユーモアも込められている。

「『何か、面白いネタがないかな?』と思われましたら、チャンネルや周波数を東京タワー方面に合わせ、金子の姿を思い出していただけましたら幸いです」

 

妻の稚子氏はそのときのことをこう振り返る。

「夫は病のことを1年以上隠していたので、後ろめたいという気持ちもあったようです。反響も大きく、今でも『東京タワーを見ると金子さんを思い出す』とよく言われるんです」

妻や子どもへの愛情など心では思っていても、生きているうちに口にするのは気恥ずかしいし、身構えてしまう。ならば、金子氏のようにじっくりと考えて、自分らしい言葉を書いておく。死んでからしか言えない言葉こそ、残すにふさわしい。

付箋のメモに思わず涙

思いを書くコツは、背伸びをしないことだ。きちんとした手紙でないと、気持ちが伝わらないというものでもない。

都内在住の石川誠さん(70歳・仮名)が、昨夏に妻を亡くしたときのことを振り返る。

「妻の葬式のあと、2ヵ月くらいはふさぎ込みがちになってしまったのです。食事もずっとスーパーの弁当しか食べられませんでした」

そんな石川さんを支えてくれたもの。それは、妻が大きめの付箋に書き遺していたメモだった。

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「家計簿の間からメモが何十枚もでてきました。そこには懐かしい筆跡で、『血圧が高いから味噌は減塩に変える』、『好物の茶わん蒸しを今度作ってあげる』などと書かれていました。『妻はここまで自分のことを考えていてくれたのか』と胸が熱くなりました」

しかも、その中には明らかに自分が亡くなったあとのことを考えて書かれているものもあった。

「『誠さんへ 売ってる弁当ばかり食べちゃ、健康に悪いよ』なんてメッセージもあって、本当に妻にはかなわないと思いました」