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江國香織が驚愕! 片岡義男の「言葉をあやつる」凄いテクニック

小説の書き方「超入門」前編

映画化もされた『スローなブギにしてくれ』の衝撃から半世紀近く――。80歳にしていまだ旺盛に小説を書き続け、しかも物語も文体も変わらず瑞々しいままの恐るべき作家・片岡義男。そんな彼の大ファンであるという直木賞作家・江國香織と批評家の佐々木敦が、小説の書き方をめぐって語り合いました。

創作に欠かせない「言葉の正確率」に「ストーリーの論理」って? 印象的なタイトルの付け方にも迫ります!

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長編小説の書き方

佐々木:本日は片岡義男さんの『窓の外を見てください』(講談社)刊行記念ということで、江國香織さんと片岡さんをお迎えしました。3年半前にもこの3人でイベントをしていまして、その時はお二人の小説の書き方を根掘り葉掘りうかがいました。

『窓の外を見てください』は長編小説なんですね。江國さんも最近『彼女たちの場合は』(集英社)という長編を刊行されたということで、今日は「長編小説の書き方」というテーマで進めていこうと思っています。

まずは江國さんに感想をお聞きしたいです。帯文を江國さんが書いていらっしゃって、まるで小説みたいになっている(笑)。

左から佐々木敦さん、片岡義男さん、江國香織さん (C)VOYAGER

江國:この作品の感想を言うのはたいへん難しいのですが、短編小説を書こうとしている作家が主人公で、彼がいかにして短編小説を書くかという思考が短編として並んでいて、それがひとつの長編になっている。この仕掛けへの驚きがまずありましたね。

佐々木:そもそも長編小説って、どう書くんでしょうか。

片岡簡単ですよ。ずっと同じ主人公で短編をいくつも書けばいい(笑)。僕は長編小説が書けないんですよ。でも編集者からは長編を依頼されてしまった。

最初の章を書いたのは昨年の5月頃なんですが、そのときは短編として書いていたんです。2作目も短編として書いたはずです。ところが3作目の途中で、さすがの僕といえども気がつくんですよ。同じ主人公でずーっと書いていけば、長編になるのではないかと。

(一同笑)

 

片岡:小説の主人公はいろいろな人と出会って、いろいろな会話をしなければいけない。会話がストーリーを前に進めてくれるわけですから。そこで、作家になったばかりの日高という主人公が誰に会えばいいかと考えるわけです。

1作目は偶然の出会い、2作目では能動的にかつての友人に会いに行く。さて、3作目でどうするか。

編集者の考えということにしてしまうのが一番いい。文芸雑誌の編集者が、「30歳の年齢差」というテーマの対談を思いつくわけです。主人公は30歳になったばかり、そこからの30歳差というと60歳、60歳の現役作家はたくさんいるから丁度いい、と考えるんですよ。それで2人が対談をするわけです。

そんな調子で主人公がさまざまな人と出会い、会話をし、そうして出来上がったのがこの小説なのです。