旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、インテリアデザイナーの小林マナさんに選書してもらいました。

旅心をくすぐる、グッドデザインの本。

デザインが素晴らしく、読めば旅に行きたくなる、そんな3冊の本を紹介しよう。

ESCAPE
箕輪麻紀子 著/ELVIS PRESS(2018)
イラストレーター箕輪麻紀子の作品集。ボルボ240、日産パオ、トヨタクラウン……。様々な車のある映画のワンシーンのような風景が続く。

高校生の頃、祖父母に付き添い、祖父の黄色いフェアレディZの後部座席にキュッと収まって山梨まで旅をした。車内は狭かったが、祖父が大好きで、しかも車好きの私には幸せな一時だった。祖父は世界中を旅していた。そんな話も旅路の楽しみだった。箕輪麻紀子さんの『ESCAPE』に登場する車たちはどこか懐かしく、風景もノスタルジック。祖父の話を思い出し、ワクワクとした気持ちになった。

HENRI’S WALK TO PARIS
レオノール・クライン 著/YOUNG SCOTT BOOKS(1962)
グラフィックデザイナー、ソール・バスがデザインした絵本。子供向けとは思えない斬新な構成で、視覚から旅する感覚が味わえる。

大学を出てパリを一人旅した時のこと。パリに住む友人と一緒に、ライトアップされた夜の街を歩き、その美しさに圧倒されたことがあった。数年後、ひょんなことからレオノール・クラインの著書で、ソール・バスがグラフィックデザインを手がけた『HENRI’S WALK TO PARIS』を入手した。この本の登場人物は皆、足しか描かれていない。文字も絵の一部となっていて、その斬新さに驚いた。主人公のヘンリーが憧れのパリになんとか一人で行こうとする物語で、数年前の自分の姿と重なった。

ぼくの美術ノート
原田治 著/亜紀書房(2017)
原田治の名著『ぼくの美術帖』を意識した装丁。正確には続編ではないが、こちらもユーモア溢れるアート紹介で旅本としても楽しめる。

最後は原田治さんの『ぼくの美術ノート』。装丁は服部一成さんだ。繊細でポップな装丁に惹かれ、思わず手にした。話は多岐にわたり、美術をテーマにパリ、ニューヨーク、はたまた日本の山歩きなどのエピソードが続く。たった一冊でどこへでも行けるエッセイ集だったのだ。いずれも、旅好きの気持ちに火を付けるような本。さあ、次はどこへ出かけようか。
 

PROFILE

小林マナ Mana Kobayashi
1966年生まれ。98年に小林恭と共に設計事務所〈ima〉設立。〈マリメッコ〉〈ファミリア〉などの店舗デザインを手がける。

●情報は、2019年10月現在のものです。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida