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大原 浩 プロフィール

人類は交換に時差を設けることでさらに発展した

欧州の大航海時代には交易でひと財産築いた人々が多かったが、このような交易は「(貨幣による)支払い先送り効果」によって後押しされた。

もちろん、交易そのものは、古代より物々交換でも行われていた。その場合は、船で他国まで出かけ、現地で、例えばアンフォラという巨大なワイン壺と手の込んだ装飾品を目の前で交換するスタイルである。この取引に時差はない。

 

しかし、大航海時代には、船そのものや積み荷を調達するために資金を出資する投資家(資本家)が不可欠であった。無事戻ってくれば多額の利益を得ることができるが、難破したりすれば、すべてが文字通り海の藻屑と消え去ってしまう。したがって、資本を持った人々が資金を出し合いそのリスクを分散したのだ。

資本家たちは、資金を提供したその場で何かをお返しをしてもらうわけではない。もし見返りを得ることができたとしても数カ月、数年先の話であり、場合によっては何も受け取れないかもしれない、しかし、このような「交換の先送り」が社会的に受け入れられたからこそ、人類の経済、さらには文明が発展したのだ。

交換の先送りはもちろん「投資」に限らず、貨幣を媒介とした取引全般で日常的に行われている。

例えば、山の村に住む人々が鹿の肉の大きな塊を担いで海の村にやってきたとする。海の村では、鹿の肉は大変な御馳走だから村人たちはぜひとも手に入れたい。ところが、ここのところ悪天候がつづき漁に出られなかったので、手持ちの魚は干したものが3匹だけだ。これでは、鹿肉の塊のごく一部としか交換できない。もちろん、山の村の人々も、せっかく運んできた鹿肉を持って帰ることはしたくない。

そこで、海の村の村長が「豊漁の時に新鮮な魚を20匹届ける」という約束をすることを申し出る。山の村の村長がこの申し出を「信用」すれば取引が成立するが、「信用できない」場合は破談となる。

貨幣論では、「貨幣が交換を円滑化」する側面ばかりが強調されるが、実は「貨幣の本質は信用」にあるのである。

要するに、子安貝、石、紙きれ、電子マネー等などが通用するのは「現在自分が受け取るべきものが、将来別の形で自分に与えられる」と信用するからであって、目に見える貨幣そのものが何か価値を持つわけでは無い。よく言われるように、1万円札の製造コストは20円ほどにしか過ぎない。

その20円の紙切れが1万円の価値があるという「共同幻想」を広めるためには、どうしても国家という、軍隊や警察までも兼ね備えた後ろ盾が必要だ。米ドルが強い通貨であるのは、世界最強の軍隊のおかげでもあるといえる。