ガンの手術・薬を「断った人」は、その後どうなるのか

著名人が続々と証言
週刊現代 プロフィール

さらに、味覚障害も起こったという。

「なにを食べても味がしないんです。治療後、友人たちがお見舞いを兼ねて私を食事に連れて行ってくれたんですが、お肉を食べているのに、その味がわからない。『ねえ、これ味が薄くない?』と尋ねて、友人にぽかんとされました。このときに、抗がん剤によって自分の身にイヤな変化が起きているんだと気づきました」

抗がん剤の副作用は、人によって違う。ほとんど出ないという人もいれば、嘔吐や吐血などが続き、日常生活に支障を来すほどつらいという人もいる。東さんの場合、後者だった。

そのとき、医者は

想像していた以上の苦しみを経験した東さんは、「治療を受けている間はこれがずっと続くのか。それなら、耐えられないかもしれない」と思い、治療を中断したいと医師に素直に打ち明けた。

 

「反対されるだろうなと思いましたが、そのお医者さんは私の話をよく聞いてくれて、『そこまでつらいなら、治療をやめましょう。月に一度検査を行い、悪い変化が現れたら、そのときにまた考えましょう』と親身になってくれました。以来、毎月一度の検査には行っていますが、それ以外は特になにもしていません」

耳鳴りはまだ少し残っているが、抗がん剤をやめたことで味覚も元にもどり、手のしびれも治まった。がんが悪化する可能性は残っているが、いまは再び平穏な日々を送れることに喜びを感じているという。

「治療そのものを否定するつもりはまったくありません。多くの患者さんにとっては、受けたほうがいいものだということもわかっています。ただ、私には合わなかった。つらくとも治療を続けてがんの進行を抑えれば、より長生きできるかもしれませんが、いまはこのがんと付き合いながら、前向きに暮らしていこうと思っています」

東さんは抗がん剤の副作用がつらくて治療を断ったが、ほかにも患者ががん治療をやめるケースがある。埼玉社会保険病院・元院長の鈴木裕也医師が説明する。

「かつては手術で治る見込みのないがん患者に対しても、病院は徹底的に延命措置を施してきました。しかし、治る見込みがないのに治療を続けても、患者さんは薬の副作用に苦しみ、病院のベッドで意識をもうろうとさせながら過ごすだけになります。

そうした問題を病院も患者も共有するようになったのでしょう。『命を長らえさせるためだけの延命治療ならば受けません』と拒む患者さんも増えています」

手術をしても治る見込みが薄いとわかった場合も同様だ。都内の大学病院に勤務する医師が、肺がんを患った60代の男性患者が治療を断ったケースについて明かす。