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中村獅童を死の淵から救った、ゴッドハンドと「身代わり地蔵」

主治医・佐野公俊 × 中村獅童

居酒屋で突然の吐き気と冷汗が襲った

「乾杯!」

2015年の早春、歌舞伎役者の中村獅童さん(当時42歳)は友人を呼び出し、都内の居酒屋で飲み始めた。再婚相手の沙織さん(当時31歳)との挙式を10日後に控え、軽く前祝するつもりだった。――ところが異変が起きる。ビールを一口飲んだだけなのに、吐き気が込み上げ、冷汗が噴き出す。顔色は真っ青。ただごとではない。

当時の様子を語る中村獅童さん(2019年9月24日撮影)
 

「友人には申し訳なかったですが、すぐに切り上げ、タクシーを呼んでもらって帰宅しました」

一方、同乗した沙織さんには思い当たることがあった。4年前、交際を始めたばかりの頃、ヘビースモーカーで大酒のみにもかかわらず「人間ドックには一度も行ったことがない」という獅童さんを気遣い、なかば強引に人間ドックを受けさせた。すると、脳の動脈に小さな瘤(こぶ)がみつかったのだ。

この瘤が破裂すると、脳卒中のなかでも致死率が高いくも膜下出血になる。破裂するリスクは瘤のサイズ、場所、形で変わる。獅童さんの瘤は小さかったが、破裂しやすい形状だった。人間ドックの医師から相談を受け、脳神経外科の名医・佐野公俊医師(当時70歳)が診断にあたった。佐野医師は「定期的に観察しましょう」と提案し、以降半年に一度、人間ドックを受けてきた。

(あの時の動脈瘤だわ。ずっとなんともなかったけど、破裂しちゃったのかしら)

慌てて佐野医師に連絡を入れると、「瘤が破裂し、くも膜下出血を起こしたかもしれない」と、緊急手術の準備をして待っていてくれた。