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米中経済戦争、再び…合理性に欠ける中国が「絶対勝てない」理由

カッとなって大局を見失う

「完全な合意」には程遠い

米国と中国は、通商問題で正式に部分合意できるだろうか。どうも雲行きが怪しい。米国のトランプ大統領はここへきて、米中対立の戦線を拡大している。米国時間の10月24日に予定されるペンス副大統領の演説が、先行きを占うヒントになるはずだ。

米国は10月12日、中国との通商協議で「部分合意に達した」と発表した。中国が米国の農産品を2年間で400〜500億ドル購入する一方、米国は10月15日に制裁関税の税率を25%から30%に引き上げる予定だったが、これを見送るという内容だった。

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ただし、これは口頭での発表にとどまっている。正式な合意文書は「作成に3〜5週間かかる」として、両国首脳による署名は11月16、17日にチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に開かれる米中首脳会談に持ち越された。

ところが、10月21日になって、ロス商務長官が米メディアで「適切な合意である必要があり、米中合意を11月に達成する必要はない。署名する内容が正しいことが重要で、大統領が望むところ」と語った(https://jp.reuters.com/article/usa-trade-china-ross-idJPKBN1X01PF)。これは何を意味するのか。

大詰めを迎えている交渉で「中国をけん制した」という見方は当然、あるだろう。「悪魔は細部に宿る」と言われるように、合意事項を文書に落としこむ段階で作業が難航し、中国側に妥協を促した。「我々は11月署名にこだわっていない」と見せつけたのだ。

そもそも、合意文書が完成していないのに、わざわざ部分合意に達したと口頭で発表したのは、なぜだったのか。

 

米中双方に景気減速傾向が出ていて、双方とも明るい材料を提供する必要に迫られていた。米側には、来年の大統領選を控えている事情もある。いわば妥協の産物として、双方が一部ではあっても合意する必要があった、という見方が一般的だ。

とはいえ「部分合意」という変則的な言い方は、裏を返せば「完全な合意には程遠い」という話である。交渉の「部分」だけを「口頭で合意した」という発表は、無理が二重に重なっている。

焦点は、中国が知的財産の窃盗行為や技術移転の強要をやめる保証が得られるかどうか、国営企業に対する補助金をやめるかどうか、だ。これまでの硬い姿勢から考えれば、中国が簡単に妥協するとは思えない。一方、トランプ政権も戦線を拡大しつつある。