こうした過去の話を、今まで、伊是名さんはあまりしてこなかった。
「話して、誰かに『あの人は恵まれていただけ』『自慢している』と批判されるのがこわかったんです」

しかし、今回の著書で、伊是名さんは、あえて、事細かに自分の子ども時代のことを書いた――自分の両親が自分のありのままを受け容れ、地域とのつながりを作ってくれたことの意味が分かったからだ。骨折したって気にしないできょうだいたちと笑い転げ、家族や近所の人たちと暮らした子ども時代はどんなに楽しかったか。

「私が『私は人と違ったところがあっても大丈夫』『自分は大切にされている』と思えるようになったのは育った環境の影響が大きいと思います。それなら、どの子にもこんな子ども時代があればいいのに。私はそのことに最近気がついてきたので、こんな家族もあるんだよ、ということを知ってほしくなったのです」

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何でも、やってみなければわからない

妊娠についても、伊是名さんは、「自分は大事な3つのことに恵まれた」と言う。
「ひとつめは、いいロール・モデルに出会ったということです。私は、結婚前に、女性週刊誌で、自分と同じ病気を持ちながら出産した女性の記事を読んだことがありました。そして、その女性と、学生時代に、偶然にリアルで出会ったのです!」

伊是名さんは、その「先輩ママ」が、骨形成不全症が遺伝したわが子を育てている様子を見ることで子育ての自信がついた。

「そして、2つ目はいい医師と出会ったことです」

その先輩女性は、伊是名さんに産婦人科も紹介してくれた。産婦人科に行くと、伊是名さんは「あなたは内診台に乗れないから診察ができない」と言われるなど、強い疎外感を感じることが多かった。ところが先輩ママの分娩を扱ったというその医師は、丁寧に伊是名さんを診察したあと、素晴らしい知らせをくれた。

「その先生は『あなたは身体は小さいけれど、子宮は普通の女性と同じ大きさがありますから妊娠、出産は可能性はあります』と言ってくれたのです。飛び上がりたいほど嬉しい言葉でした」

その後、その医師は家に近い大学病院の医師を紹介してくれた。そして、その紹介された医師も同じように伊是名さんの妊娠を温かく応援してくれた。

第一子妊娠7ヵ月のとき、妊婦検診を受ける伊是名さん 写真提供/伊是名夏子

「その病院では、先生たちはどんなリスクがあるかはきちんと説明してくれましたが、だめだと最初から決めつけることはせず、いつも『実際にどうなるかは、その時になってみなければわからない』と言ってくれました。私や夫が過剰な心配をしそうになると『赤ちゃんは急に大きくなることはないから、身体には慣れる時間があります』『危険な兆候があれば、すぐに対応します』と言って安心させてくれたのです」