どんなテクニックにも勝るのは、ハートだと思う

「俳優の仕事は、その世界の一部になることだと思います。役の気持ちを考える、役の一生を考えるのが僕らの本分。だから、監督なり演出家なりが、“ここにこういう役者が欲しい”とイメージした時に脳裏に浮かぶ存在ではありたい。でも自分から『僕を使ってください!』というのは、何かちょっと違う気がするんです。もちろん、いつか前川さんの作品に出てみたいとは思いましたけど、その時の僕にできることは、前川さんに欲されるような存在になることしかなかった」

「自分の大好きだった世界がここにある!」と感激した2年後、ついにその世界の住人を演じることになった。前川さんの新作舞台『終わりのない』で彼は、宇宙船に乗って時空を超えた果てしない旅を続ける高校三年生の悠理を演じる。

「お話をいただいた時は、もちろん嬉しかったです。ただ、僕の場合、一つの役に注ぐ情熱は、いつも同じなんです。全力でやること。ベストを尽くすこと。心を込めて演じること。それしか考えていません。役の大小とか、作品の内容によって、自分のエネルギー出力を調節するわけじゃないんです。ただ役のことを考えて考えて、掘り下げる。何がこの人をそうさせたか、徹底的に考える。考え抜くことは、僕にとっては当たり前の作業で、『わからなくてもいいや』とは到底思えない。そうやって、台詞と感情を繋げるためのあらゆる想像をした上で、本番は“ハート”で演じます(笑)。僕、音楽でも芝居でも、何かを表現する時に、どんなテクニックより勝るのは、ハートだと思っているんです。

以前、テレビで銀杏BOYZの峯田(和伸)さんが、『今までで一番感動したライヴは、地元の友達が、仲間にありがとうを伝えたくて歌ったカラオケだ』って話していて、それって究極だなと思った。日常の中で、友達のために涙する時と同じ気持ちで演じられたら、最強ですよね。僕は、湧き上がる感情を、お芝居にしたくない。まだまだ、その境地に達することはできないですけど、“できる”と信じてやるだけです」

結局、彼にとって“考える”ことは、“演じるという概念”を外していく作業なのかもしれない。変幻自在に役になりきる“カメレオン俳優”と言われて久しいが、役になるというより、役の立場で常に“自分はなぜここにいるのか”を考えているのが彼なのだ。

「『レオン』という映画を観て、エンドロールまで、刑事を演じているのがゲイリー・オールドマンだったことに気づかなかったことがあったんです。もともと、ゲイリー・オールドマンは気になる俳優だったのに、『え?いたの?』って衝撃でした。でも、俳優としては僕もそうありたい。目立つんじゃなく、水のように溶け込みたいんです(笑)」

ずっと、人気や認知度は気にせずに、ただ作品と役だけのために全エネルギーを使いたいと思っていた。