「膜」が世界を救う! 植物の真似をして地球温暖化を逆転させる方法

CO2回収技術変革への道
清水 修, ブルーバックス編集部

「そう、難しいのです。ふるいにかけるのと同じなわけだから粒子の大きさに合わせた膜を用意することが大事なのですが……。

まず、水素の分子の大きさは2.8オングストローム(以下、Å)です。CO2の分子の大きさが3.3Å、窒素の分子の大きさが3.4Å。これらの分子のうち、CO2だけを通す穴を膜にあけなければなりません。

でも、CO2がちょうど通れる穴をあけたとしたら、もっと小さい水素の分子も通り抜けてしまいますよね。CO2は一番小さい分子ではないので、選択的に通すことがなかなか難しいわけです。

じゃあ、どんな膜にすればいいのか……。「化学的にCO2と相性の良い材質を使った膜」を作ればよいのです。化学的に相性がよい材質の膜であれば、自然にCO2が膜に引きつけられます。ふわーっと膜に寄ってきて中を通ってくれるわけです。

水素の分子は膜に近づいてこないので通らない。そうなれば、CO2だけを選別する膜ということになりますね」

透過性と選択性の微妙なバランス

なるほど、膜の材質がカギである、と。

「しかし、CO2だけが通る(透過する)膜を作ったとしても、今度は『目が細かいふるいは、なかなか通りにくい』という問題に突き当たります。子供のころ、砂場で遊んだ時に経験したように、細かい粒の砂を集めたい場合に『目の細かいふるい』を使うと、なかなか出てきませんよね。時間がかかります。

CO2を分離する膜はナノレベルの穴の膜ですから、加圧しないと容易に透過しないのです。だから、場合によっては、少ない加圧で透過させられるように、ふるいの目を少し粗くしなければならない場合も出てくるが、そうなると、選択性は低下してしまいます。

つまり、どれだけの量の気体を透過させられるかという『透過性』と、どこまでCO2のみを選択的に透過させられるかという『選択性』の関係を考えて、もっとも効率の良いバランスを見つける必要が出てきます。これはコストに大きく関係してくるのです」

透過性の指標としては「GPU」という単位がある。これは、1平方メートルの膜に1気圧を加えて(つまり、膜の両側の気圧に1気圧の差圧をつけて)、1分間に45リットルの気体が透過するのを1,000GPUとする単位だ。

この数値が上がれば上がるほど、膜は気体をたくさん透過させたことになるので、量的な処理効率は良くなることになる。

しかし、CO2の選択性(CO2のみを透過させる性能)を上げれば上げるほど、透過量は低くなる。CO2を取り出せる量が減ってしまうわけだから、処理効率が悪くなり、コストも上がってしまう。

「つまり、少しぐらい雑な選別でも良いので、どんどん処理できるほうが、CO2回収の効率が上がって、コストも下げられるのですよ。『CO2回収の選択性とコストの関係』を示した研究によれば、選択性が40くらいまではコストが下がっていきますが、それ以上に選択性を上げていってもコストは下がりません。

ですから、われわれWPI-I2CNERの研究チームでは、この『4000GPUで選択性40くらいの膜』を研究開発目標にしようと決めました」

究極の分離膜をお手本に

さあ、開発目標は決まった。ではどうやって開発するかですね。

「そう、どのようにして目標に近い膜を作るか。そもそも、気体が膜を透過する際には3つのステップがあります。

まず、『吸着』。CO2が膜に近づいていって引っ付くことですね。次に、『拡散』。膜の中をCO2が通っていくことです。最後に『脱着』。膜を通り抜けたCO2が外に出ることですね。

このステップを効率化するには、できるだけ膜を薄くして『拡散』の時間、つまり膜内部を通り抜ける時間を短くしてやる必要があります。膜を限りなく薄くしていくことが大切。ということで、いろいろと考えているうちに、この世界でもっとも性能の良い『究極の分離膜』に気づきました」

究極の分離膜?

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