人気銘柄「風の森」蔵主が語る「生き残るために僕がやったこと全て」

油長酒造・山本長兵衛13代目インタビュー

いまだやまない日本酒ブーム。その人気を支えているのは、個性的で旨い純米酒を次々と繰り出してくる小さな酒蔵だ。今年、創業300年を迎えた奈良の「油長酒造」もまた、そんな酒蔵の代表格。いまから21年前、「油長酒造」は無濾過、無加水、生酒をうたった「風の森」ブランドを立ち上げ、いまでは多くのファンがついて入手困難な酒となっている。

口の中で広がる微発泡感、生酒ならではのレッシュさ、そしてバランスのよい旨味ーー。「搾ったままの味わい」が一番の特徴だ。13代目蔵主の山本長兵衛さん(38)に日本酒が持つ魅力、業界のこれからについてうかがった。

 

変化の速度が違う

――伝統産業でありながら、日本酒業界は明らかに新しいビジネスを展開し始めています。味もさることながら、地域振興の核となりつつある酒蔵も少なくありません。

 
油長酒造( 奈良県御所市)の十三代目・山本長兵衛さん

山本:日本酒は伝統産業で、祖父やその前の世代のスタイルをそのままの姿で継承させていくのも、ビジネスのひとつのやり方だと思うんです。ただ、一方で、日本人の生活スタイルや味覚は時代の流れの中で大きく変化してきているのも事実です。特に戦後は急速な変化で、いまなお変わり続けている。江戸時代から昭和前半の200年余とは変化の速度が違う。

いま、もっともっとたくさんの飲み手に楽しんでいただこうとしたときに、現代の科学技術があるので、それをお酒造りに生かさない手はないわけです。そこにはいろいろな可能性があって、それこそが、いま、酒造りをしている面白さなんです。

たぶん、蒔絵や塗り物のような工芸の伝統産業って、技術的には江戸時代後期から明治にかけてがピークなんです。消費財でないものは、一回買うとなかなか買い替えもないし、生活スタイルの変化もあって、いまは難しいところにきていると思う。でも、日本酒は飲んだらなくなりますからね(笑)、飲食の伝統産業のほうがまだ継続的にビジネスをしやすい業種なのかなと思います。