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天皇賞・秋直前!ルメール騎手と国枝栄調教師がレース前に話すこと

アーモンドアイを巡る知られざる関係

現役最強馬を決する大一番が目前に迫ってきた。GⅠ馬10頭という超豪華メンバーが揃い、例年以上に大きな注目を集めている天皇賞・秋が、いよいよ明日開催される。目下、1番人気の支持を受けているのは、昨年の年度代表馬アーモンドアイだ。内枠有利とされるところ、1枠2番という絶好の枠順をひいたため、もはや言い訳は許されず、絶対に負けられない1戦となった。

そのアーモンドアイを語るうえで欠かせないのが、騎乗するルメール騎手と管理する国枝栄調教師なのだが、二人の付き合いは実はそれほど長くない。ルメール騎手が短期免許を取得し日本にやってきた2002年から約14年間、国枝調教師の管理する馬には2回しか騎乗していないからだ。その後、二人はいかにして強固な信頼関係を築いてきたのか――。競馬界でいま話題の、国枝調教師による初の著書『覚悟の競馬論』(講談社現代新書)の一部を特別公開!

 

馬のポテンシャルを引き出すために

競馬のことで僕ら2人は難しいことは話さない。国枝調教師はいつも「じゃ、よろしく」ってニコニコしている。競馬が終わって、もし負けても何も言わない。馬の状態とか敗因について聞かれることはあるけど、それは彼の仕事だから。でも負けたことについて文句を言われたことはない。

そのかわり、国枝調教師は強引な走りを嫌っている。特に新馬戦は、競走馬のレースキャリアの始まりなので、すごく大切になる。もしバッドレースだったら馬がレースを嫌いになってしまって、次のレースであまり走りたがらなかったり、エキサイトし過ぎたりしてしまうことがあるからだ。

だから、負けても国枝調教師は「オーケー、ノープロブレム。いい練習でした。次のレースはもっと活躍するかもしれない。問題ないです。次のレース勝ちましょう」と言ってくれる。

ヨーロッパには〝ホースファースト〟の調教師が多いけれど、彼も同じタイプで、ヨーロピアン・トレーナーによく似ている。調教でも馬をあまりプッシュしない。本番のレースで馬のポテンシャルをいかに引き出すかを意識している。そこは藤沢和雄調教師とも共通している。

最初の印象は薄かった

僕が2002年にJRA騎手の短期免許を取って日本に来た時は関西(栗東)にいて、国枝調教師がいる関東(美浦)にはあまり行かなかったので、彼の顔は知っていたけど印象は薄かった。はじめてのコンビは中京競馬場で、2005年の冬。3歳以上500万下、バンダムハリアーで5着だった。そこでもあまり喋った記憶はない。パドックの時にレース展開について「あの馬が前か後ろか……」ぐらいの会話だった。

それから10年以上のブランクがあり、2015年に通年免許を取得した翌年、東京競馬場で国枝調教師のサンマルティンという3番人気の馬で1着になった。そこからは関東にも行く機会が増え、彼の厩舎の馬でたくさん勝つようになって、「国枝先生は凄い」と思うようになった。

その後コミュニケーションが少しずつ増えて、騎乗依頼のあった馬を中心にした話ではあったけれど、彼はいつも僕を信頼してくれ、モチベーションを高めてくれる。国枝調教師と僕とは、競馬に関する哲学というか考え方(〝ホースファースト〟)が一緒で、それがより一層、お互いの信頼関係を強くしてくれた。

そこに登場したのが、アーモンドアイだった

アーモンドアイ(photo by gettyimages)