異例のスピード承認

乳がんの乳房再建に用いる「人工乳房」が特殊なリンパ腫を発症するケースが日本国内で1例確認できたことから、国内で使用されていた人工乳房が、発売元のアラガン・ジャパンにより、自主回収されました。このニュースは、乳がん経験者や治療中の女性に大変ショッキングな出来事となりました。

日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会によると、再建前に使う拡張器を体内に入れたまま治療の中断を迫られている患者が3000人以上に上るとの調査結果もあり、早急な打開策が求められていました。

そして、10月8日、人工乳房の回収品の“代替品”が異例とも言える速さで厚労省の承認へとつながったのです。

通常数ヵ月から1年以上かかる審査を約1ヵ月で済ませるスピード承認。そして、さらに10月16日にはこちらも異例の速さで、公的健康医療保険の対象の製品となりました。

なぜ、こんなに早く厚労省の承認が進んだのか…。その背景には、乳がんを経験した女性たちの熱意と活動があったのです。

乳房再建という「希望」が

日本女性に最もかかりやすいがんが乳がん。今や11人に1人の日本女性が乳がんにかかると言われています※1。私も乳がんを経験したひとりです。

乳がんにかかった、私たち女性の大きな心の不安は、乳房を切除した後のこと。「がんと闘って命を守らなくてはいけない。でも、乳房のない人生をこの先、歩むことのつらさ、切なさ」は、女性なら誰もが共感できるのではないでしょうか。

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そんな女性たちの心を支えてくれる治療のひとつが、乳房再建です。「がんの手術で仮に乳房を失っても、乳房再建がある」。乳房再建があるから、つらい治療を乗り越えられたという女性は、少なくありません。

ところが、国内で乳がんの乳房再建に使われていたシリコン・インプラントの人工乳房が今年7月下旬に、製造企業であるアラガン・ジャパンによって、自主回収されてしまいました。

アラガン社はアイルランドの大手製薬企業で、同社の人工乳房は、欧州、米国だけでなく日本を含めたアジアでも広く使われています。しかし、この人工乳房を使った女性の一部に、乳がんとは別のリンパ腫のがん(ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫=BIA-ALCL)が発症することがわかったのです。米食品医薬品局(FDA)は今年7月24日、このリンパ腫を発症した人は世界で573人、関連があるとみられる死者が世界で33人に上る、と発表。それを受けて、アラガン社が自主回収に動き出したわけです。

※1 国立がん研究センターがん情報サービス 最新がん統計より