靴のサイズが「若い頃より大きくなったら」要注意

50歳で足形は急変する(後編)
アシックス スポーツ工学研究所

O脚のどこが問題か

ストレート足は、内側へ広がることで親指が圧迫されるため、外反母趾のリスクが特に高い足だと言えます。

一方、足が外側へ広がっていくカーブ足は、O脚の影響を受けていると考えられます。O脚になると、何が問題なのか。まず考えられるのは、足の外側に体重がかかりやすくなるため、内反小趾になりやすいことです。外反母趾の逆です。

さらに、ひざの内側に力がかかりやすく、ひざの内側の軟骨がすり減っていきます。骨と神経が直接ぶつかるようになって、痛みを生じます。高齢者がよくひざの痛みを訴えるのは、こうした「変形性膝関節症」を発症していることが多いのです。

外反母趾や変形性膝関節症についての詳しい解説は、『究極の歩き方』(講談社現代新書)にありますのでここでは省きますが、多くの高齢者が悩まされています。

また、O脚についても男女問わず、悩んでいる人は多いはずです。

軽度なO脚は男女でさほど差はないのですが、強いO脚では男性のほうが多くなります(図11)。女性はX脚や直脚(両足の内側をぴったりとくっつけて、両ひざ関節部にすき間がない状態)のほうが多く、O脚は男性のほうが多い傾向になります。

ただし、歳を重ねると、女性もO脚が多くなります。変形性膝関節症に悩まされるのは、むしろ女性のほうが多いくらいですが、こちらも詳しくは『究極の歩き方』で解説しています。

自分の足に合わせた靴選びが重要

カーブ足、ストレート足といった分類はアシックス独自のもので、靴作りに活かされています。

さきほど見たA、B、C、D、E、2E、3E、4E、F、Gというサイズは、足長と足囲で決まります。足長というのは、かかとから一番長い指(人によって違います)の先までの長さのことです(図6参照)。

足の形状が異なっても、同じ足長、同じ足囲なら、計算上は2Eや3Eなど、まったく同じサイズになります。しかし、外側へ広がったカーブ足であるか、内側へ広がったストレート足であるかによって、同じサイズの靴を履いても履き心地はまったく異なってきます。

それらのタイプに応じた靴作りをすれば、よりフィット感が出てきます。

高齢者の多くは「窮屈だから、もっと幅広の靴が欲しい」とおっしゃいます。加齢とともに足の幅が広がるため、当然と考えています。だから、3Eとか4Eとかいった幅広タイプがよく売れます。

ところが、私たちが足囲を測ってみると、それほど幅が広くない足でも、幅の広い靴を履いているケースが少なくないのです。このような人たちは足の幅が広がったために窮屈に感じているわけではなく、カーブ足に変形したから窮屈に感じていると思われます。

このため、シューフィッターなどの靴の専門家の目から見ると「そこまで幅広の靴を選ばなくても……」ということが起きます。足に合わないブカブカの靴を履いていると、また別の障害が出てくることになるので、自分の足に合った靴選びが大切です。

こういった背景を踏まえて、サイズは変えずに、カーブ足に対応した靴を作ることにしました。全体に幅広にするのではなく、外側方向に余裕を持たせた作りにする。指先の部分が少し太くて、全体に少しだけ外側へ広がっているような形状の靴です。

要は、ちょっとしたバランスなのです。足長、足囲だけで判断されるお客様が多いので、「私、履く靴がないのよ」というケースがよく見られます。

このため、アシックスは日本人の足に合わせてスタンダード足だけでなく、カーブ足対応の靴も用意しています。

「シューズをいろいろ試したんですが、同じサイズでも、アシックスの靴のほうが足になじんで履きやすいですね」そんな声を耳にします。

その理由が、日本人の足の特徴に合わせた靴作りと関係しているのであれば、非常にうれしいことだと思います。

株式会社アシックス スポーツ工学研究所   1985年アシックスのシューズ、アパレルの研究部門が統合されて設立。「スポーツで培った知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンを具現化するアシックスの基幹を担う研究部門。人間の身体や動作を科学的に分析することで、アスリートに限らず、一般の人々の生活に役立つ製品やサービスを継続的に開発することを哲学としている。アシックスは1980年代に「走れるビジネスシューズ」を発売、ウォーキングの研究を進め、2002年に3次元足形計測機を店頭に配備、100万人以上の国内外の足形データを持つ。2017年に3Dセンサーを使った歩行姿勢測定システムを、NECソリューションイノベータと共同で開発、3Dセンサーに向かって歩くだけで、その人の歩き方の特徴や歩行年齢がわかるシステムを生かして分析を進めている。