未婚の母も問題視…フィンランドの「強制不妊手術」知られざる実態

今も優生思想が見え隠れしている
岩竹 美加子 プロフィール

こうした思想は、スウェーデンに伝えられた。スウェーデンの作家ヴィクトル・リュードバリ(1828〜1895)は、スカンジナビアの神話を研究、スウェーデンに最も純粋な「アーリア人」が住んでいると考えた。また、フィンランド人やスラブ人、サーミは、人種的に純粋ではないとも考えていた。

この思想は、スウェーデン語系フィンランド人によって、フィンランドに伝えられた。それは、スウェーデン語系知識人の地位を強固にする一方、フィンランド語系フィンランド人によっても内面化されていった。フィンランド内部で、優生学的な序列が創出されていったのだ。

断種法を最初に制定したのは、アメリカ(1907年)である。その後、デンマーク(1929年)、ドイツ(1933年)、スウェーデンとノルウェー(1934年)、フィンランド(1935年)などが続いた。

参考までに、日本では優生保護法によって1948年〜1996年までの間、障がい者などへの強制不妊手術が行われていた。

 

優生思想の負の遺産との対峙

フィンランドで、自国の強制不妊が語られ始めたのは1990年代後期である。それは、重大な人権侵害であり、驚きと衝撃を持って受け止められた。現在もテレビやラジオ番組、雑誌、書籍などで取り上げられ続けている問題である。断種手術を受けた人による、政府に対する補償や謝罪要求もされている。

強制不妊手術が過去のホラーとなり、現在のフィンランドが、人権を重視する国に変わったことは評価できる。現在は、過去の反省の上に築かれる。しかし、まだ癒されていない苦しみがある。

また、移民・難民の増加と関連して、優生思想が見え隠れすることがある。優生思想の負の遺産との対峙は、今もフィンランドで重要な課題であり続けている。

【参照】
Mattila, Markku. 1999. Kansamme Parhaaksi. Rotuhygienia Suomessa vuoden 1935 sterilointilakiin asti. Suomen Historiallinen Seura.
Testaa: olisiko sinut pakkosteriloitu 1930- luvun Suomessa?
https://yle.fi/aihe/artikkeli/2017/10/13/testaa-olisiko-sinut-pakkosteriloitu-1930-luvun-suomessa