未婚の母も問題視…フィンランドの「強制不妊手術」知られざる実態

今も優生思想が見え隠れしている
岩竹 美加子 プロフィール

強制不妊手術には、財政的な側面と優生学的な側面があった。一つは、出現しつつあった福祉国家での所得の再分配の問題。もう一つは、「悪い」遺伝子を除去しようとする思想である。

フィンランドで婚姻法が制定されたのは、1929年。断種法とほぼ同時期である。婚姻法第11条は「精神病を持つ者、または低脳は結婚してはならない」としている。

続いて第12条は、「外的理由に依らないてんかん症を持つ者、感染度の高い性病を持つ者は、共和国大統領の許可なく、結婚してはならない。ろう者同士の結婚は、許可なく認められない」である。

結婚も優生学的な問題だった。大統領の許可まで必要な結婚もあったのだ。

 

現在、約40%の子どもが婚外子

フィンランドでは、1935年の断種法制定以前にも強制不妊は行われていて、最初のケースは1912年、親のない子ども等を育てる養育院で行われた。養育院での強制不妊手術の場合は、少女よりも少年が多かった。

1950年になると断種法が改定され、手続きが簡素化、効率化された。1935年の法律では、医者の許可が必要だったが、50年の改正法では医者の診断書で手術ができるようになった。それによって、犯罪や非社会的な生活習慣など、社会的な理由による避妊手術が増え、手術は何倍にもふくれ上った。

断種法が廃止されたのは、1970年である。それまで、強制不妊手術は続けられていて、総計54,128人が手術された。その内、90%は女性。医学的理由が43,063人、優生学的理由が7,530人、社会的理由が3,373人、その他の理由が162人である。

本人には知らせず、手術が行われたこともあった。また、選挙権を与えられない、または奪われたこともあったという。

1930年代には、人口の約10%が強制不妊を必要とすると目されていた。現在のフィンランドの人口は約550万人だが、1930年代は340万人程度である。その内の約10%に断種の必要があると考えられていた。現在、フィンランドには少子化問題があるのだが、今とは非常に異なる人口政策である。

また現在は、約40%の子どもが婚外子として生まれている。未婚の母であることは、問題視されていない。