天皇はなぜ「王(キング)」ではなく「皇帝(エンペラー)」なのか

世界史で読み解く「天皇ブランド」の奇跡
宇山 卓栄 プロフィール

「天皇」を掲げた古代日本人の国際戦略

現在、世界には27の君主国が残り、王(King)はいるものの、「皇帝(Emperor)」と呼ばれる人物は天皇陛下ただ一人です。

国際社会において、皇帝である天皇は王よりも格上と見なされます。ただし、これは慣習的かつ儀礼的なものであり、法的なものではありません。序列が公式に定められているわけでも決してありません。

「王の中の王たる存在が皇帝」であったという歴史の一般理解の上で、皇帝としての地位が尊重されるということに過ぎません。「皇帝たる天皇は他国の王の上座に座る」などという俗説が流布されていますが、そのような事実はありません。

では、なぜ、天皇はそもそも、王ではなく、皇帝なのでしょうか。「天王」ではなく、「天皇」を名乗ったのはなぜなのでしょうか。

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「皇」は王と同じ意味ですが、光輝くという意味の「白」が付いています。「帝」には束ねるという意味があり、統治者を指す言葉です。糸偏をつけた「締」は文字通り、糸を束ねるという意味です。従って「皇帝」とは「世界を束ねる光輝く王」という意味になります。

 

「皇帝」の称号を最初に使ったのが秦の始皇帝でした。

中国皇帝は各地の王を従えていました。中国の王は皇帝によって、領土を与えられた地方の諸侯に過ぎません。中国皇帝は日本の天皇に対し、そのような一地方の臣下という意味で、「倭王」の称号を授けていました。

7世紀、日本は中央集権体制を整備し、国力を急速に増大させていく状況で、中国に対する臣従を意味する「王」の称号を避け、「天皇」という新しい君主号をつくり出しました。皇国として、当時の中国に互角に対抗しようという大いなる気概が日本にはあったのです。

608年、聖徳太子が中国の隋の皇帝・煬帝に送った国書で「東天皇敬白西皇帝(東の天皇が敬いて西の皇帝に白す)」と記されていました。『日本書紀』に、この国書についての記述があり、これが主要な史書の中で、「天皇」の称号使用が確認される最初の例とされます。