〔PHOTO〕gettyimages

天皇はなぜ「王(キング)」ではなく「皇帝(エンペラー)」なのか

世界史で読み解く「天皇ブランド」の奇跡

10月22日、各国から要人が招かれ、天皇陛下が自らの即位を内外に示す「即位礼正殿の儀」が盛大に行われました。

〔PHOTO〕gettyimages

来月11月10日には、台風19号の被害を踏まえ延期された祝賀パレードが、さらに11月14から15日にかけて、「大嘗祭(大嘗宮の儀)」が行われます。

この国家的な祭儀を前に、私たち日本人が最低限知っておきたい皇室の稀有なる歴史を、『世界史で読み解く「天皇ブランド」』の著者が解説します――。

大嘗祭と新嘗祭はここが違う

新嘗祭は毎年行われるのに対し、大嘗祭は天皇1代につき1度だけ行われます。新天皇が即位の礼の後に初めて行う新嘗祭を大嘗祭といいます。

一般的に大嘗祭は新嘗祭の豪華バージョンというイメージがあるかと思いますが、じつは両者はその内容が異なります。

1990年(平成2年)、天皇明仁(上皇明仁)の大嘗祭の様子〔wikipediaより〕

いずれも、稲穂を天照大御神に捧げ、五穀豊穣を祈るということでは共通していますが、新嘗祭では、皇居の御田で天皇陛下自らが育てた稲穂を神に捧げるのに対し、大嘗祭では、国民が育てた稲穂を神に捧げるという点が決定的に異なるところです。

国民が育てた稲穂をあえて使うのは、国民が神と直接に繋がることを天皇陛下が御祈りされるためです。大嘗祭は、天皇陛下が国民の安寧を祈る公的かつ国家的な祭儀です。国事行為ではありませんが、公的な性格を帯びた儀式であるために、公費が支出されます。

 

今回、大嘗宮の屋根は予算削減のため、萱葺(かやぶき)から板葺(いたぶき)に変更されましたが、大嘗祭のような公的な儀式を倹約するのはいいことなのかどうか、大いに議論の求められるところです。

「令和の大嘗宮」の全体模型〔wikipediaより〕

また、大嘗宮について、「仮設」の建造物とする記述もありますが、そうではありません。神と繋がる祭儀を行う大嘗宮は真新しい御殿でなければならず、1度使った御殿は使い回しません。これは清浄を重んじる精神の現れであり、「仮設」という捉え方とはまったく違うのです。

剥き出しの「黒木造」という皮つき柱が使われ、一見、粗末な柱を使っているように見えますが、これも、自然のままの真新しい木材を尊重するという視点で使われるものです。飾り気のない質素な大嘗宮には、日本独特の美学や歴史的な世界観が表れています。