東電社員は見た…「賠償金詐欺」恐ろしき「恫喝の現場」

指のない「被災者」が現れて…
高木 瑞穂 プロフィール

「何とか払えませんか?」

「いや、そう言われても……」

「なら、どうすれいいんですか? あなたが直接話してください!」

事情は理解したが、電話では感情論になる可能性が高い。岩崎は過去の売り上げ台帳などを見て報告書をあげてほしいと伝えた。

〔PHOTO〕iStock

それでも怒りは収まらない。相談員からケータイを奪った副組合長が言う。

「それを用意したら払うんだな!」

「いや、払う、払わないではなくて。まずは書類を確認させてほしいんです」

相談員から、最後に「私の命が危ないんです」と懇願されて、その日は終わった。

翌週、茨城の相談員がわざわざ東京の岩崎のもとへやってきた。電話では状況が伝わらないと判断したのである。その相談員は、茨城のテキ屋群を一手に請け負っていた。指のない男たちに突き上げられ、今回ばかりは殺されるかもしれないというのだ。

「こちらから請求書の雛形を送ったのは3月ですが、それ以前から逐一呼び出しされ『どうなんだ、払えるんだろ!』と凄まれていたんです。相手は小指がないんですよ。『払えません』なんて言えるわけないですよね。だから『請求できます』と答えて、なんとかやり過ごしていたんです。

それでいざ請求したら、『払えないかも』という手紙が届いた。そんなことしたら爆発するのは当然ですよね。売り上げの水増しはともかく、真面目に営業していた人もいた。営業実態があったことは事実なので、どうにか払えませんか」

ヤクザの対応にほとほと疲れた。この状況から抜け出すために是が非でも払ってほしい、というわけだ。

それでも岩崎が屈することはなかった。ヤクザの名前を出されても払わなかったのである。ある請求書などは、どう見積もっても一つのテキ屋から夫と妻とのダブルで請求してきていた。裏で繋がっていて山分けする算段なのではと、岩崎は疑ったのである――。