東電社員は見た…「賠償金詐欺」恐ろしき「恫喝の現場」

指のない「被災者」が現れて…
高木 瑞穂 プロフィール

電話での怒鳴り込み

やがて被災者たちの請求は危険エリアから飛び出し、避難区域外の事業者たちが“風評被害”をタテに請求書を送り始めたのである。福島県内ばかりでなく茨城、栃木、群馬、千葉県の16市町村からも訴えが湧き上がる事態になった。

2月、そして3月――。

倍々ゲームのように増え続ける請求書。東電が掲げる「迅速なお支払い」という目標を達成するための手続きの簡略化。しかし、すべての請求を完全にスルーするわけにもいかず、どこまで賠償ルールを厳格に適用するか逡巡を繰り返す――。賠償係は翻弄された。

 

過熱した「賠償合戦」は、新たな問題を生んだ。杜撰な賠償金支払いの実態に目を付けた詐欺師たちが賠償金詐欺に乗り出した。そう、それは “マネーゲーム”の始まりだった。

満を持したかのように茨城のテキ屋の副組合長から30通の請求書がまとめて届いたのは、2012年3月のある日のことだ。一件あたり平均1000万円。なかには2000万円を越えるものもあった。

〔PHOTO〕iStock

彼らは、自分たちの「営業実態」を証明するため、各催しのチラシコピーやインターネット告知のコピーを添付し、テキ屋の組合発行の証明書類も同封してきた。賠償請求の被害概況を述べる欄は、まるで東電の社内資料を抜粋したような書きぶりだった。

むろん、岩崎は却下を匂わす手紙を送った。テキ屋一つで2000万円の売り上げがあるはずがない。どうせヤクザまがいの連中の仕業だろうと考えてのことだ。

やはり、相手は根っからのヤクザだった。すぐさま茨城の東電相談員から助けを乞う電話が掛かってきたのだ。

「呼び出しを食らって、いま副組合長の家にいるんです」

後ろで激昂する副組合長の怒鳴り声が聞こえた。

「話が違うだろ! 疑ってるのか!」

岩崎が事情を尋ねると、相談員は声を押し殺しながら答えた。

「相手は手の片手の指が二本しか無いんですよ!」

身の危険を感じているようだ。