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東電社員は見た…「賠償金詐欺」恐ろしき「恫喝の現場」

指のない「被災者」が現れて…

東電賠償金の闇

東京電力福島第一原発事故で損害を受けたと偽り、NPO法人の元幹部らが賠償金をだまし取ったとされる詐欺事件に絡み、東電社員が「賠償金の請求方法を教えた見返りに現金数百万円を受け取った」と供述していることが、捜査関係者への取材で分かった。警視庁は、詐欺に関わっていなかったかどうかを慎重に調べている。(2016年3月18日「朝日新聞」)

これは当時、東京電力の社員として「賠償係」をしていた岩崎拓真(仮名)が、匿名ではあるが、賠償金の請求方法を教えた見返りに「現金数百万円を受け取ったと供述している」と報じられてしまった新聞記事だ。

 

そして、この報道から9日後、岩崎は詐欺の共犯の疑いで書類送検される。忘れもしない2016年2月27日土曜日。岩崎は42歳、東電に入社して20年目のことだった。

彼は、東電の賠償係として働く中で詐欺事件に巻き込まれ、結果的に書類送検された。近刊『黒い賠償』では、なぜ東電のいち社員であった彼が書類送検されなければならなかったのか、その経緯を追っている。

東電の賠償係とは、2011年3月に起きた東京電力福島第一原発事故で移住を強いられた個人や風評被害を受けた法人に東電が補償をするための部署だ。岩崎は主に法人を担当していた。

震災直後の南相馬市〔PHOTO〕Gettyimages

筆者は、書類送検後に東電からクビを切られた岩崎と出会ってから、彼の話をもとに、湯水のようにジャブジャブと支払われ続けている東電賠償金の「闇」を追ってきた。

東電によれば、2019年7月12日までで、賠償の請求は延べ290万件を超え、約9兆622億円という膨大なカネが被害者に支払われている。注目すべきは、そこに、詐欺師によって搾取されたカネも含まれていることだ。震災後には、法人や個人事業主が混乱につけ込み、原発事故と関係ないのに「自分は被災をした」と風評被害を受けたと偽って補償金をだまし取る「賠償詐欺」が横行していた。

賠償は原賠法(原子力賠償法)に基づき、原子力損害賠償支援機構(以下、原賠機構)からの支援金をあてている。その財源は、もとは公金や電気料金。そこから多額のカネが詐取されてきたと考えられている。

岩崎の内部告発から浮かび上がってきた、巨額のカネが詐欺師たちよって搾取されている原発賠償の黒い姿の一端を、ここでは紹介しよう。