視力6000! 世界が協力して作り上げた最強の「目」の秘密

アルマ望遠鏡は宇宙に何を見るか
平松 正顕 プロフィール

しかし、宇宙には今まさに生まれたばかりの星たちが潜んでいます。その様子をつぶさに調べることで、星や惑星の誕生のプロセスを解き明かそう、というのがアルマ望遠鏡の挑戦です。

研究者が涙した写真

アルマ望遠鏡が撮影した、惑星系の誕生現場を一つご紹介しましょう。

おうし座HL星の周囲の塵の円盤 Photo by ALMA (ESO / NAOJ / NRAO)拡大画像表示

これは、地球から約450光年のところに位置する若い星「おうし座HL星」の周囲を電波で撮影した画像です。

中心には生まれて100万年に満たない星があるのですが、この画像には写っていません。星が放つ電波は非常に弱いからです。

その一方で、星を同心円状に取り囲む輪っかが何本も写っています。この正体は、マイクロメートルサイズの大量の塵からなる円盤(原始惑星系円盤)です。この塵が長い時間をかけて集まることで、惑星になると考えられます。

おうし座HL星の原始惑星系円盤は巨大で、太陽系の海王星軌道の2倍以上の広がりを持ちます。太陽系も、46億年前にはこのような姿をしていたのかもしれません。

 

ただ、惑星系ができあがるには数十万~数百万年以上かかるので、望遠鏡でこの星をじっと観測していても惑星の成長を見届けることはできません。

そこで研究者たちは、たくさんの若い星を探し、観測しています。さまざまな年齢の若い星を調べることで、惑星系誕生のプロセスを解き明かすことができると期待しているのです。

おうし座HL星の画像が発表されたのは、2014年の末のことでした。原始惑星系円盤のこれほどはっきりした画像が撮影されたのは初めてのことで、天文学者たちにとっても衝撃的でした。

私の身近にも、この画像を見て感動の涙を流したという研究者が少なくとも2人います。もちろん、こういう姿を撮影するためにアルマ望遠鏡を作ったわけで、予想していた画像が得られただけ、と言うこともできます。

しかし、想像するのと実際に撮影された画像を見るのとでは、まったく別物の体験でした。

アルマの「けた外れ」な視力

おうし座HL星の原始惑星系円盤の鮮明な画像は、アルマ望遠鏡の非常に高い解像度(視力)が存分に発揮された結果と言えます。アルマ望遠鏡がどのようにして高い解像度を得たか、簡単に説明しましょう。

望遠鏡は、一般に大きければ大きいほど解像度が向上します。しかし、たとえば直径10kmのレンズを持つ望遠鏡を作ることは技術的に不可能です。そこで考え出されたのが、小さな望遠鏡をたくさん組み合わせて、全体として一つの巨大な仮想望遠鏡を構成する仕組みです。これを、「干渉計」と呼びます。

冒頭で触れたブラックホール観測を可能にしたのも、干渉計です。このときは、地球上にちらばる8つの望遠鏡を組み合わせ、直径9000kmにも及ぶ干渉計を作り出しました。