Photo by ESO / B. Tafreshi (twanight.org)

視力6000! 世界が協力して作り上げた最強の「目」の秘密

アルマ望遠鏡は宇宙に何を見るか
宇宙について思いを馳せたことがあるでしょうか。もっと進んで、宇宙人の存在や、宇宙そのものの成り立ちに思いを巡らせたことがある人も多いかと思います。

人類が長年抱いてきた宇宙の疑問に挑む最前線が、南米チリの標高5000mの高地に建設され、2011年に科学観測を開始した巨大望遠鏡「アルマ望遠鏡」です。

生まれつつある惑星系、激しく星を生み出す原始銀河、そして生命のもとにもつながるかもしれないさまざまな有機分子を、アルマ望遠鏡は目撃しています。

21世紀の技術で、人類共通の謎である「私たちのルーツ」がどのように読み解かれようとしているのか──。ブルーバックスWebでは、専門家の手による驚きに満ちた解説を、新シリーズにて配信していきます。

ブラックホールの「影」をとらえた!

2019年4月10日、人類が初めて目にする画像が世界6カ所でいっせいに発表されました。それは、ブラックホールの「影」。この画像は、マスメディアをまたたく間に席巻し、ソーシャルメディアでは大きなバズを生み出しました。

ブラックホールの「影」 Photo by EHT Collaboration
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何を隠そう、私は日本の記者会見場の片隅で、プレスリリースのサポートをしていたのです。人類が紡いできた科学の歴史に刻まれる大きな一歩にかかわる喜びと緊張で、手を震わせながら──。

 

ブラックホールの撮影に使われたのは、世界中の6ヵ所8台の望遠鏡をつないで構成する「地球サイズ」の仮想望遠鏡でした。つながれたのは、いずれも電波をとらえる電波望遠鏡です。目に見える光(可視光)をとらえるふつうの望遠鏡では見えない世界も、電波望遠鏡を使えば見ることができます。

そして、この望遠鏡群の中でとくに大きな力を発揮したのが、南米チリで運用されているアルマ望遠鏡でした。

ターゲットは星や惑星が生まれる「現場」

天文学者は、さまざまな望遠鏡を駆使して宇宙の謎に迫ろうとしています。それは、望遠鏡によって与(くみ)しやすいターゲット、つまり解ける謎が異なるからです。宇宙の広がりを調べたいのか、惑星の成り立ちを調べたいのか、はたまたブラックホールを調べたいのかによって、使うべき望遠鏡は変わります。

アルマ望遠鏡はさまざまな宇宙の謎に挑むことができますが、なかでも星や惑星が生まれる現場の観測に大きな威力を発揮します。それは、星や惑星の材料(宇宙をただようガスや塵)から放たれる電波をキャッチできるからです。

アルマ望遠鏡 Photo by 国立天文台
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「宇宙は真空だ」と聞いたことがあるかもしれません。

たしかに地球の大気に比べると宇宙空間はほとんど何もない場所ですが、まったく何もないわけではありません。夜空に輝く星々の間には、ごくごく希薄ながら、ガスや塵がただよっています。そのような物質が長い時間をかけて寄り集まることで、夜空の星々や私たちが住む地球(惑星)ができあがったのです。

「星はどうやって生まれるのか?」

「地球のような惑星はどんなところで作られるのか?」

こうした謎に挑むためには、星や惑星が生まれるまさにその現場を見る必要があります。

人類は残念ながらタイムマシンを持っていないので、実際に46億年前の太陽や地球誕生の様子を見ることはできません。