知る③ハタハタ寿司

この日は作業場で、ハタハタの骨を除いたり、ハタハタ寿司を箱詰めしたりといった作業を行っていた。

秋田の保存食といえば、代表的なのが「ハタハタ寿司」。寿司といってもシャリにネタがのっているわけではなく、米麹で発酵させた“なれずし”で、これこそが秋田の伝統の味。

魚を乳酸発酵させた伝統的な保存食
【三浦米太郎商店】

頭と内臓をとって日陰で干しているハタハタは、燻製やオイル漬け、炊き込みご飯の素などの加工品にも使われる。大きな扇風機で風を送り込んでいた。

“秋田名物 八森ハタハタ”。
『秋田音頭』の一節にも登場するハタハタは、秋田の人々にとってお馴染みの県魚。歌詞に出てくる「八森」とは、青森との県境近くの山本郡八峰町八森のことをいう。

工場のすぐ裏手に見えるのは、平沢漁港。ここで水揚げされたハタハタを主に使っている。

ハタハタ漁は八森の岩館海岸が有名だが、県南西部のにかほ市にある平沢漁港でも盛んだ。その漁港からすぐの場所に工場を構えるのが〈三浦米太郎商店〉。江戸時代から船問屋を営み、明治時代からはハタハタの卸売専門店として継がれてきた。

ハタハタ寿司作りは、ハタハタを洗い、粗塩でもんで3日間塩漬けにすることから始まる。その後酢水へ。三日三晩漬け込んで、重石をしてさらに丸一日、冷蔵室へ。
殺菌作用のあるクマザサを敷いたら、材料を順にのせていく。20層にもなる。冷蔵室で1ヵ月ほど漬け込み、発酵させる。近所の人からもらうという、ゆずが隠し味。

看板商品のハタハタ寿司は、ハタハタと県産米に、ニンジンや紫のり、ゆず、麹を加え、塩と酢に1ヵ月漬け込んで作る。

十三代目の三浦悦朗さん。豆板醤入りの調味料やオイル漬けなど、ハタハタの新たな食べ方にも挑戦している。

「最近は麹の代わりに砂糖を使うお店もありますが、うちは昔ながらの製法を続けています。その方が自然な甘みが出るし、持ちがいいんです」と、十三代目の三浦悦朗さんは語る。

完成したハタハタ寿司を箱詰めしているところ。手作業でふっくらと詰める。

もとは、正月料理としてふるまわれたハタハタ寿司。皮が硬く、骨が太いハタハタを柔らかくするための知恵として、酸で発酵させたのがはじまりだ。冷蔵庫がない時代には、雪室の中で保存されたという。伝統食の難しさは、継承がうまくいかないと味が変わってしまうこと。地元の麹店が代替わりしたとき、思うように仕上がらなくなったことがあった。いい麹は、発酵が進んでも白いままなのだという。現在は、横手市〈羽場こうじ店〉から麹をとる。

この町のシンボルでもある鳥海山。冷蔵庫のない時代は、ここの雪を使って食品を保存していたほど、人々の生活と切り離せない存在だった。秋田県と山形県にまたがる、日本百名山のひとつ。鳥海山の伏流水は、この町では恵みの水だ。

ピーク時でこの地域に12軒あったハタハタ寿司の店も、現在はここを含め2軒にまで減った。後継者不足はどこも同じだが、三浦さんの長男が十四代目として営業や販売をサポート。この味を次世代へ引き継ごうとしている。

三浦米太郎商店
冷蔵で14日、冷凍で3ヵ月保存可能なハタハタ寿司は、¥ 1200/200 gから。店頭での販売のほか、土産物店などでも販売している。来店の際には事前に電話連絡を。
秋田県にかほ市平沢字上町49
☎0184-35-3609
営業時間:8:30~17:00
定休日:不定