雪深い冬が長く、食品を保存する必要のあった秋田では幅広い発酵食文化が発展してきました。秋田の女性のツヤ肌は、からだに優しい発酵食の賜物です。

醤油や味噌、日本酒などを口にしたとき私たちが感じる“うまみ”は、日本の国菌である“麹菌”に由来するといいます。発酵食文化が根強い秋田で、もう一歩踏み込んで発酵を知ることのできるお店をご紹介します。

知る①醤油

6000ℓもの醤油を醸造する杉樽が並ぶ「伝統的もろみ蔵」では、低温発酵と熟成が進む。古いものでは百余年前の年号が刻まれている。太陽光の入りにくい最も北側に配置されており、ファクトリーツアーでは、職人たちが作業している姿を見られることも。
新たな醸造を試みる「革新的もろみ蔵」では、発見された酵母を使用し、革新的な風味を醸成する。

原料や作り方が似ていることから、味噌と同じ蔵で造られることの多い醤油。県内では、20以上の蔵元で醤油を製造しているといわれている。秋田の代表的な「あま塩醤油」は、塩分は控えめで、ほんのりした甘みがあるのが特徴。

伝統ある調味料に新たな価値を
【ヤマモ味噌醤油醸造元】

ほんのり甘みがある「あま塩醤油」が、秋田の代表的な醤油。つけ醤油、かけ醤油、煮付けなど、使い勝手のいい日常の調味料。

煮物に焼き物、お刺身にと、日本の食卓に欠かせない調味料といえば“醤油”。「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」に分類され、地域によっても馴染みの味は変わる。日本で流通する8割を占めるのが「こいくち」だが、そのなかでも秋田の味といえば「あま塩醤油」。塩分は控えめで、ほんのり甘みがあるのが特徴だ。

秋田県内に流通するのは1 .8ℓ瓶がメイン。
1.8ℓ瓶は昔ながらのデザイン。これが秋田ではお馴染みのパッケージ。

醤油の基本的な原料は、大豆、小麦、塩。同じ原料を使い、同じような造り方をしても、醸造元によって醤油の味が違うのは、香りの決め手となる酵母や、味作りに欠かせない麹がそれぞれ違うから。秋田県内で醤油を製造している蔵を20ヵ所調査したところ、4ヵ所で特異的な“蔵付きの酵母”が見つかったという。そのうちのひとつが、〈ヤマモ味噌醤油醸造元〉。県南部の湯沢市で150年以上続く醸造所だ。七代目の高橋泰さんは、建築を学んだのちに家業を継いだ人物。

リニューアルしたパッケージは七代目が手がけたもの。海外輸送に耐えられるよう、断熱性と密封性を併せ持つ素材を採用した。店頭では商品の販売も行っている。

「誰が継いでも変わらないものを守るのではなく、伝統と革新を融合させることで、レガシーとして次世代へ残すことに意味がある」と話す。そんな七代目は、伝統の味を守るだけでなく、新たな酵母を用いた醤油づくりにも積極的だ。2012年からは海外展開もスタートさせ、自身がデザインを手がけた商品パッケージにリニューアル。蔵と土地の魅力を伝えるファクトリーツアーには、新たな手法としてアートを取り入れた。

庭園を望む〈YAMAMO GARDEN CAFÉ〉では、仕込みにも使われる天日塩をベースに味付けしたフォーや、味噌醤油ソースを使ったジェラートなどを提供。書家でもある六代目が手掛けた作品の展示もあり、アートの力を伝統産業に生かしている。

併設する〈YAMAMO GARDENCAFÉ〉では、四代目が作庭した庭園を背景に、醤油や味噌を用いたメニューでおもてなし。日本の調味料に馴染みのないインバウンドの旅行者にも受け入れられやすいよう、フォーやジェラートなどにアレンジした。ここを訪れれば、醤油ができる工程を見て、実際に味わって、知ることができる。

ヤマモ味噌醤油醸造元
ツアーでは四代目が作庭した回遊式庭園の見学も。地元・岩崎の歴史や文化も学びながら、伝統と革新に触れられる。
秋田県湯沢市岩崎124
☎0183-73-2902
営業時間:ショップ9:00~18:00、カフェ11:00~17:00(LO16:30)
定休日:日・祝