ファインマンが日本の物理学者に感じた「物理的な違和感」の正体

意外! 物理の神髄は「数式」にあらず
竹内 薫 プロフィール

延々と黒板を数式で埋め尽くす日本の物理学徒に対して、ファインマンさんは、さらりと「なんだか物理学的に違和感がある」というような感想を洩らす。物理学徒は、数式が完璧だから自分は正しいと主張し、激論となる。

「地の文」に隠されたイマジネーション

これはつまり「想像力」の問題なのですな。

 

ファインマンさんにとって数学は言語であり、その言語で何を語るかが重要だった。だから、数式の背後にある物理現象をイメージしてみて、辻褄が合わないなと感じたのだ。ところが、数式だけが命の物理学徒には、イマジネーションが欠けているから、(数式を書き連ねるという意味では)雄弁なだけで中身がない。

となると、『ファインマン物理学』の地の文がいかに重要であるかがおわかりいただけるだろう。そう、そこにはファインマンという不世出の天才の脳髄から溢れ出る豊穣なイマジネーションがいっぱい詰まっているのだ。

授業をするファインマン(奥)。手前は1957年にノーベル物理学賞を受賞した楊振寧氏 Photo by gettyimages
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とはいえ、密度の濃い文章なので、いい加減に読んでいてはファインマンさんの真意は伝わらない。そこで、大学院を卒業し、カルチャーセンターでじっくりと『ファインマン物理学』と向き合った不肖竹内薫が、ファインマンさんの真意をできる限り汲み取って、物理愛好家のガイドブックになるよう書いたのが、『「ファインマン物理学」を読む 量子力学と相対性理論を中心として』(2004年初刊)なのです。無論、相対性理論の部分も『ファインマン物理学』の解説である。

おかげさまで、本書は単行本のときも版を重ねることができた。今回、ブルーバックスで刊行されるにあたり、改めて自著を読み返してみた。うん、15年前の私は熱かった。そして、この本はまだ生きている……新たな読者に受け入れられ、物理学が好きになる人が増えたら、著者として望外の喜びである。是非、本屋さんの店頭で手に取ってみてくださいね~。