リチャード・P・ファインマン Photo by gettyimages

ファインマンが日本の物理学者に感じた「物理的な違和感」の正体

意外! 物理の神髄は「数式」にあらず
物理学を修める者なら誰もが手に取る伝説の教科書、『ファインマン物理学』。しかし、この教科書にも一つ弱点がある──「長い」ということだ。

サイエンスライターの竹内薫氏が、こ
の長〜い教科書を読み解く手助けをするために書いた『「ファインマン物理学」を読む 量子力学と相対性理論を中心として』が、このほどブルーバックス化された。

それを記念して、今回は『ファインマン物理学』の本当に優れている点を竹内氏がみずから紹介する。

「良い教科書」の条件

大学の学部生のとき、量子力学がわからなくて閉口した。もともと法学部進学課程から物理学科に「理転」しちゃった変わり種なので、同級生と比べて、理数修行年数が短かったせいもある。

教授が指定した教科書は、フランス人が書いた分厚い上中下3冊本で、やたら数学が出てきて、教授と優等生だけが喜んでいた。この教科書では、あらゆる量子力学の数式が「定理」みたいに証明されるのだが、まったくもってチンプンカンプン。

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いきなり不確定性原理と交換関係の数学的同等性とやらを証明されても、「なんでいきなり、そんなことを思いついたのですか?」という疑問が先に立ってしまう。神様みたいに数学の宇宙を隅々まで知っていたら、そういった同等性は最初から「見える」のかもしれないけれど、私みたいな凡人はしょっぱなからコケてしまう。

数式の洪水にあっぷあっぷしていた、そんな私の前に、ひょこっと救世主が現れた。ようやく辿り着いた、知の砂漠のオアシス。それが私にとっての『ファインマン物理学』だった。

 

私はこの本を読み進むうちに、何度も何度も頷いていた。そう、これこそは、「徹底的に自分で考え抜いて納得した人が書いた教科書」だったのだ。

ファインマン vs. 日本の物理学徒

当時、同級生の秀才たちは『ファインマン物理学』を馬鹿にして、件のフランス人の教科書や、ロシア(旧ソ連)の天才が書いたランダウ=リフシッツの教科書を好んで読んでいた。

なぜ『ファインマン物理学』が馬鹿にされていたかといえば、数式よりも地の文が多かったからだ。

「なに、この数式の少ない文章ばかりの本、ぷぷぷ」

みたいな感じで。

このような日本の物理学徒の数学盲信については、ファインマン自身が京都に滞在していたときに学徒たちと丁々発止のやりとりをしている。