中国の爆速成長が変えた「経済のルール」と、取り残された日本企業

「垂直統合」に固執すれば失血死が待つ
野口 悠紀雄 プロフィール

水平分業が世界を変えた

フォックスコンのような企業は、製造業の生産方式に、根本的な変化を与えることになった。「垂直統合から水平分業へ」という世界的な動きが起きたのだ。

それまでの製造業の生産方式の主流は、大企業が、1つの工場内で、工程の最初から最後までのすべての過程を行うものだった。これを「垂直統合型の生産方式」という。

 

しかし、中国が工業化したことによって、複数の企業が市場を通じて作業を分担することが容易になった。

すべての工程を1つの企業内で行なうのではなく、個々の企業はもっとも得意な分野に特化し、複数の企業が全体として協業しあって、あたかも1つの企業のように生産活動を行なうのだ。これを、「水平分業型の生産方式」という。

中国が大量生産分野を担当して生産を行うことによって、工業製品の価格が世界的に下落した。このため、日本に生産拠点を置く企業は、コスト競争についていけなくなっていった。

やがて、日本企業も中国などのアジア諸国に生産拠点を移し、そこで生産を行うようになった。

このような環境変化の中で先進国がめざすべき道は、アップルに典型的にみられるように、賃金によって決まる製造過程でコスト引き下げ競争を行なうことではなく、開発や研究という付加価値が高い分野に特化し、中国企業と棲み分けていくことなのだ。しかし、これは日本型大企業が不得意な分野だった。

時代が大きく変わったにもかかわらず、日本企業はそれに対応することができなかった。

『中国貧困絶望工場』は、あるアメリカ人の言葉を紹介している。「まだアメリカ国内で労働集約型ビジネスを続けているなら、今すぐに手を引く方が、出血多量で死ぬよりましだ」。

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