中国の爆速成長が変えた「経済のルール」と、取り残された日本企業

「垂直統合」に固執すれば失血死が待つ
野口 悠紀雄 プロフィール

常識を越えるフォックスコンの巨大工場

この頃に世界の注目を集めた企業として、フォックスコンがある。

これは、世界最大のEMSだ(EMSとは、電子製品などの組み立て作業を受託する企業)。

フォックスコンは、台湾の鴻海精密工業の子会社で、アップル製品の最終組み立てを行なっている。

 

ところで、同社の深圳工場で、2010年に3カ月あまりの間に12人もの自殺者が相次いだ。

同社は「自殺しない」という誓約書を書かせたとか、従業員の不満をなだめるため20%の賃金引き上げに応じた、などのニュースも報じられた。

自殺者が相次ぐのは、確かに異常だ。しかも、同工場での勤務体制は、1日15時間労働、月給が日本円換算で1万2000円未満というものだ。

ただし、重要なのは、深圳工場の巨大さが、われわれの常識を超えていたということだ。

当時の同工場の従業員は、45万人だった(中国全体では、95万の従業員がいると言われた)。

これだけの数の従業員がいるので、自殺者の総数も多くなる。自殺「率」でみれば、フォックスコンは、中国の平均を下回っていたのだ。

45万人の工場とは、われわれが知っている「工場」とは異質のものだ。これは都市である。しかも、かなり大きな都市だ(金沢市とほぼ同規模)。われわれが実感として把握できる範囲を超えているのである。

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