中国の爆速成長が変えた「経済のルール」と、取り残された日本企業

「垂直統合」に固執すれば失血死が待つ
野口 悠紀雄 プロフィール

貧困工場、影の工場

企業も猛烈な競争圧力に直面した。膨大な数の競争者がいる。分野を絞っても、競争相手は、数社でなく、数百社というオーダーになる.

だから、利益が圧縮される。とくに、製造部門がそうだ。

付加価値は中国に残らず、外国のブランド業者や小売業者に渡ってしまう。「濡れ手に3ドル」という言葉があった。これは、中国で1ドルで生産されたものが、小売業者にわたるときは4ドルになっているということだ。

劣悪な労働環境に対しては、当然、厳しい当局の監視がある。しかし、アレクサンドラ・ハーニー、『中国貧困絶望工場』(日経BP社、2008年)によれば、「陰の工場」という抜け道がある。

 

法律を遵守するモデル工場の他に、第2工場、第3工場があるのだ。そこでは、残業はごく普通に行われている。監視員は、モデル工場しか見ない。陰の工場は、外国人のジャーナリストからは厳重に隠されているので、外部にその存在は知られない。

労働法を守っていては、ビジネスはできない。注文に応えるには、残業を増やすしかない。労働規制や最低賃金は、政府の宣伝にすぎない。

地元の企業なら、地方の役人とのコネを利用して、うまくすり抜ける。これが汚職の温床になる。政治はカネになる。そして、労働者も違法残業を求める。かくして、過酷な条件下の労働が続いた。

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